主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
主さまの屋敷へ行く間の牛車の中で…息吹と絶対に身体が触れ合わないように隅っこに座って腕組みをして瞳を閉じていた。
…明らかに不機嫌に見える。
だが息吹は臆することなく主さまに近付いて隣に座り直した。
「…離れろ」
「怒ってるの?疲れてるの?疲れてるわけないよね?全然手伝ってくれなかったし」
「…お前…最近言うことが晴明に似てきたな」
――あれから天叢雲は再び封印し、御所では結局晴明が手柄を横取りしたようなもので、主さまは全く疲れてはいなかったのだが…
息吹とこんな狭い空間で2人きりでいるとどうにかなりそうになるので牛車の中でごろりと横になってこれ以上の会話を拒絶すると…
急に頭を持ち上げられたかと思ったら…息吹に膝枕をされてしまった。
「!や、やめろ!」
「眠たいんでしょ?父様にも眠たくなる時はいつも眠るまで膝枕をしてあげたの。私の太股が気持ちいいんだって」
「…あの助平が…」
確かに息吹の膝枕は寝心地が良く、じんわりと体温が伝わってきて、主さまは額にじっとりと変な汗をかいた。
「暑いの?お屋敷に着いたら団扇で扇いであげるね。あ、雪ちゃんの息の方がいいかな」
「…誰が男の吐息など浴びるものか。少し黙ってろ」
がたごとと少し揺れる度に主さまの頭が膝から落ちないように息吹が肩を優しく押さえてくれていて、
だんだん顔が熱くなってきだした主さまは袖で顔を隠してひたすら祈っていた。
…早く着いてくれ!と。
「主さま、着いたよ。あっ、母様っ」
「朝起きたら居なくて心配したよ。あんたは本当にもう…どこへ行くのかだけはちゃんと言っておくれ!」
また山姫に怒られたが、こうして怒られる経験があまりない息吹は嬉しそうに笑い、一緒に出迎えに出てきていた雪男が息吹のその笑顔を見て頬を赤らめると、主さまから頬を思いきりつねられた。
「いでででっ」
「寝る。…あれに手をだしたらここから追い出すからな」
ひそりと脅迫してきた主さまに生唾を飲み込むと、かくかくと頷いた。
「わ、わかった」
…実際はわかっていなかったのだが。
…明らかに不機嫌に見える。
だが息吹は臆することなく主さまに近付いて隣に座り直した。
「…離れろ」
「怒ってるの?疲れてるの?疲れてるわけないよね?全然手伝ってくれなかったし」
「…お前…最近言うことが晴明に似てきたな」
――あれから天叢雲は再び封印し、御所では結局晴明が手柄を横取りしたようなもので、主さまは全く疲れてはいなかったのだが…
息吹とこんな狭い空間で2人きりでいるとどうにかなりそうになるので牛車の中でごろりと横になってこれ以上の会話を拒絶すると…
急に頭を持ち上げられたかと思ったら…息吹に膝枕をされてしまった。
「!や、やめろ!」
「眠たいんでしょ?父様にも眠たくなる時はいつも眠るまで膝枕をしてあげたの。私の太股が気持ちいいんだって」
「…あの助平が…」
確かに息吹の膝枕は寝心地が良く、じんわりと体温が伝わってきて、主さまは額にじっとりと変な汗をかいた。
「暑いの?お屋敷に着いたら団扇で扇いであげるね。あ、雪ちゃんの息の方がいいかな」
「…誰が男の吐息など浴びるものか。少し黙ってろ」
がたごとと少し揺れる度に主さまの頭が膝から落ちないように息吹が肩を優しく押さえてくれていて、
だんだん顔が熱くなってきだした主さまは袖で顔を隠してひたすら祈っていた。
…早く着いてくれ!と。
「主さま、着いたよ。あっ、母様っ」
「朝起きたら居なくて心配したよ。あんたは本当にもう…どこへ行くのかだけはちゃんと言っておくれ!」
また山姫に怒られたが、こうして怒られる経験があまりない息吹は嬉しそうに笑い、一緒に出迎えに出てきていた雪男が息吹のその笑顔を見て頬を赤らめると、主さまから頬を思いきりつねられた。
「いでででっ」
「寝る。…あれに手をだしたらここから追い出すからな」
ひそりと脅迫してきた主さまに生唾を飲み込むと、かくかくと頷いた。
「わ、わかった」
…実際はわかっていなかったのだが。