主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
雪男は改めて息吹をまじまじと見つめて、山姫と一緒に幼かった頃に着ていた着物や遊び道具を箪笥から出して昔話を始めた2人の傍で茶を飲むふりをしながら…息吹を見ていた。
――艶やかでまっすぐな長く黒い髪。
曇りのない少し下がった黒い瞳と、少し触れただけで折れてしまいそうな細い身体に雪男は顔を赤くして俯いた。
「雪ちゃん?どうしたの?顔が赤いよ」
「そ、そっか?そう言われるとすげえ暑い…」
「お風呂入れてあげるね。氷も入れておくから身体冷やした方がいいよ」
よく気が利く息吹が丁寧に着物を畳んで風呂場に向かい、にやにや笑っている山姫を睨みながら息吹を追いかけて風呂場へ行くと、早速浴槽に水を溜めるために裏庭の井戸から水を汲もうとしていた。
「い、いいって。部屋に戻れば涼しいからさ」
「え、戻っちゃうの?雪ちゃんと遊びたかったのに」
残念がって桶を床に置いた息吹が見上げてきて、雪男は最近ずっと考えていたことを打ち明けた。
「お前さ…主さまの真実の名を知ってるよな?呼んだことあるか?」
「?十六夜さん、でしょ?知ってるけど…主さまって呼ぶ方がしっくりするしあんまり呼ばないけどどうして?」
「あのさ…俺の…その…俺の真実の名も知りたくないか?」
――真実の名を明かすのは、心を契る行為と同じ。
真実の名を一生明かすことがない妖も多く、雪男はずっと息吹に知って自分の名を知ってほしいと思っていた。
少し戸惑いながら息吹の手を握って、きょとんとした顔で見上げて来る息吹に再度問うた。
「俺の名を…」
「呼んでもいいの?ならみんなが居ない時に呼ぶね。その方がいいんでしょ?」
「ん。俺の名前は…氷雨(ひさめ)って言うんだ。意味は…」
「冷たい雨、だよね?綺麗な名前!氷雨って言うんだね。主さまは知ってるの?」
手を繋いだまま裏庭へ出て、息吹の代わりに山姫が育てていた花を見て回りながら問うてきた息吹に雪男はすぐ頷いて笑った。
「俺たち百鬼夜行に加わる者はみんな主さまに名を渡してる。主さまはすごいんだぜ!」
活き活きと主さまを誉める雪男。
主さまは、皆の憧れ。
――艶やかでまっすぐな長く黒い髪。
曇りのない少し下がった黒い瞳と、少し触れただけで折れてしまいそうな細い身体に雪男は顔を赤くして俯いた。
「雪ちゃん?どうしたの?顔が赤いよ」
「そ、そっか?そう言われるとすげえ暑い…」
「お風呂入れてあげるね。氷も入れておくから身体冷やした方がいいよ」
よく気が利く息吹が丁寧に着物を畳んで風呂場に向かい、にやにや笑っている山姫を睨みながら息吹を追いかけて風呂場へ行くと、早速浴槽に水を溜めるために裏庭の井戸から水を汲もうとしていた。
「い、いいって。部屋に戻れば涼しいからさ」
「え、戻っちゃうの?雪ちゃんと遊びたかったのに」
残念がって桶を床に置いた息吹が見上げてきて、雪男は最近ずっと考えていたことを打ち明けた。
「お前さ…主さまの真実の名を知ってるよな?呼んだことあるか?」
「?十六夜さん、でしょ?知ってるけど…主さまって呼ぶ方がしっくりするしあんまり呼ばないけどどうして?」
「あのさ…俺の…その…俺の真実の名も知りたくないか?」
――真実の名を明かすのは、心を契る行為と同じ。
真実の名を一生明かすことがない妖も多く、雪男はずっと息吹に知って自分の名を知ってほしいと思っていた。
少し戸惑いながら息吹の手を握って、きょとんとした顔で見上げて来る息吹に再度問うた。
「俺の名を…」
「呼んでもいいの?ならみんなが居ない時に呼ぶね。その方がいいんでしょ?」
「ん。俺の名前は…氷雨(ひさめ)って言うんだ。意味は…」
「冷たい雨、だよね?綺麗な名前!氷雨って言うんだね。主さまは知ってるの?」
手を繋いだまま裏庭へ出て、息吹の代わりに山姫が育てていた花を見て回りながら問うてきた息吹に雪男はすぐ頷いて笑った。
「俺たち百鬼夜行に加わる者はみんな主さまに名を渡してる。主さまはすごいんだぜ!」
活き活きと主さまを誉める雪男。
主さまは、皆の憧れ。