主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
しばらく上空を飛んでいた何かは居なくなり、まだ空を見上げていると主さまが平安町の方向から帰ってくるのが見えて大きく手を振った。
「主さまー」
「あんたの“主さまー”を聞くと昔を思い出すねえ」
「主さまー、じゃなくて、“主しゃまー”だろ?」
山姫と雪男にからかわれ、確かに昔はうまく発音ができなくてそう呼んでいた息吹は調子に乗って全開の笑顔で言い直した。
「主しゃまー、お帰りなさい!」
「!そ、その呼び方はやめろ!」
夕暮れになって集結し始めていた妖たちが主さまににじり寄って敬意を各々口にし始めた。
普段は照れ屋な主さまも百鬼の前ではきりりとしていて凛々しく、縁側に座って脚をぷらぷらさせていると、気配もなく肩に触れてきた者がいた。
「お嬢さんや」
「わっ、びっくりした!おじいさんは…ぬらりひょんさんだよね?」
「ああそうさ。主さまの下に戻って来たのは何故か知りたくて声をかけたんだ。何故だ?」
上品な着物を着こなした小さな老人は気配を完全に消すことで有名な大物妖怪で、足にで鵺や猫又がまとわりついてくるのを見ながら首を傾げた。
「だってここは私の家で…主さまは私の父様と同じで…」
「父代わりは安部晴明だろう?主さまはお嬢さんに執着しているようだしお嬢さんも主さまに執着しているように見える」
「えと…」
「おい、息吹を惑わせるな。それより話がある。大狸も連れて来い」
「人使いが荒いのう」
一瞬目を離した隙にぬらりひょんの姿が消えて目を丸くしていると…主さまが噴き出した。
「主さま?」
「お前…今の顔、晴明にそっくりだったぞ」
珍しく笑い声を上げて、羨望の眼差しで主さまを見つめる妖たちを1度ぐるりと見回すと、腕を組んでぞんざいに言い放った。
「明後日、高千穂へ向けて出発する。遠出になるが、ついて来たいものはついて来い」
「おお、鬼八塚に!?悪さばっかりしやがったことを悔やませてやろう!」
盛り上がる妖たち。
息吹はそっと主さまに声をかけた。
「主さま…私は?」
「…後で話す」
今は対策を立てなければ。
「主さまー」
「あんたの“主さまー”を聞くと昔を思い出すねえ」
「主さまー、じゃなくて、“主しゃまー”だろ?」
山姫と雪男にからかわれ、確かに昔はうまく発音ができなくてそう呼んでいた息吹は調子に乗って全開の笑顔で言い直した。
「主しゃまー、お帰りなさい!」
「!そ、その呼び方はやめろ!」
夕暮れになって集結し始めていた妖たちが主さまににじり寄って敬意を各々口にし始めた。
普段は照れ屋な主さまも百鬼の前ではきりりとしていて凛々しく、縁側に座って脚をぷらぷらさせていると、気配もなく肩に触れてきた者がいた。
「お嬢さんや」
「わっ、びっくりした!おじいさんは…ぬらりひょんさんだよね?」
「ああそうさ。主さまの下に戻って来たのは何故か知りたくて声をかけたんだ。何故だ?」
上品な着物を着こなした小さな老人は気配を完全に消すことで有名な大物妖怪で、足にで鵺や猫又がまとわりついてくるのを見ながら首を傾げた。
「だってここは私の家で…主さまは私の父様と同じで…」
「父代わりは安部晴明だろう?主さまはお嬢さんに執着しているようだしお嬢さんも主さまに執着しているように見える」
「えと…」
「おい、息吹を惑わせるな。それより話がある。大狸も連れて来い」
「人使いが荒いのう」
一瞬目を離した隙にぬらりひょんの姿が消えて目を丸くしていると…主さまが噴き出した。
「主さま?」
「お前…今の顔、晴明にそっくりだったぞ」
珍しく笑い声を上げて、羨望の眼差しで主さまを見つめる妖たちを1度ぐるりと見回すと、腕を組んでぞんざいに言い放った。
「明後日、高千穂へ向けて出発する。遠出になるが、ついて来たいものはついて来い」
「おお、鬼八塚に!?悪さばっかりしやがったことを悔やませてやろう!」
盛り上がる妖たち。
息吹はそっと主さまに声をかけた。
「主さま…私は?」
「…後で話す」
今は対策を立てなければ。