主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
大物妖怪が大広間に集結して高千穂への遠出を話し合っている間、息吹は襖にもたれ掛りながら隅っこに座り、雪男のひんやりした手をずっと握っていた。
…もちろんそれに気付いていた主さまはいらいらしていて、逆に雪男はにこにこしていて…
息吹の体温で手は火傷してしまいそうになっていたのだが、手を離したくなくてずっと黙っていた。
「雪ちゃんも行くの?」
「山姫は残るし、その選抜を今主さまたちがしてる。ここを空にして百鬼夜行に加わってない奴らが悪さしに来るといけないからさ」
「ふうん…。雪ちゃんも行くんだね…いいなあ…」
「駄々をこねてるって聞いたぞ」
「うん…。でも駄目みたい。雪ちゃんひんやりして気持ちいいな…。膝枕して」
「えっ?わ、ちょっと息吹っ」
息吹がころんと横になって雪男の膝枕を借りたのを見て我慢の限界にきた主さまは、手を振って解散を命じた。
「明日はいつも通り百鬼夜行に出て、明後日の夕暮れに出発だ。遅れたら置いて行くからな」
「おお!」
主さまと遠出できることが嬉しいらしく、全員が笑っていて、すくっと立ち上がった主さまは息吹の腕を引っ張って無理矢理立たせると襖を開けて寝室へと押し込んだ。
…その間、雪男をぎらっと睨んで牽制するのを忘れず、連れ込まれた息吹は肩で息をついた主さまににじり寄って髪紐を引っ張った。
「ねえ、私は?」
「…」
「主さま、私を連れて行ってくれるでしょ?」
――勝手に髪紐を外されて息吹に奪われてしまい、他の者にそんなことをされたらそれこそ血祭りに上げる主さまは息吹の顎を掴んで上向かせると、牙を見せつけた。
「さっきの出来事を忘れたのか?不味くとも今すぐ食ってやろうか?」
「だって…一緒に行きたいんだもん!駄目?なんでも言うこと聞くから…お願い!」
――元々連れて行くつもりだったのだが、“なんでも言うことを聞く”と言われ…
様々な妄想が働いて顔を赤くしながら、頷いた。
「…約束だぞ」
「!うん、ありがとう主さま!」
抱き着かれて、むくむく。
…もちろんそれに気付いていた主さまはいらいらしていて、逆に雪男はにこにこしていて…
息吹の体温で手は火傷してしまいそうになっていたのだが、手を離したくなくてずっと黙っていた。
「雪ちゃんも行くの?」
「山姫は残るし、その選抜を今主さまたちがしてる。ここを空にして百鬼夜行に加わってない奴らが悪さしに来るといけないからさ」
「ふうん…。雪ちゃんも行くんだね…いいなあ…」
「駄々をこねてるって聞いたぞ」
「うん…。でも駄目みたい。雪ちゃんひんやりして気持ちいいな…。膝枕して」
「えっ?わ、ちょっと息吹っ」
息吹がころんと横になって雪男の膝枕を借りたのを見て我慢の限界にきた主さまは、手を振って解散を命じた。
「明日はいつも通り百鬼夜行に出て、明後日の夕暮れに出発だ。遅れたら置いて行くからな」
「おお!」
主さまと遠出できることが嬉しいらしく、全員が笑っていて、すくっと立ち上がった主さまは息吹の腕を引っ張って無理矢理立たせると襖を開けて寝室へと押し込んだ。
…その間、雪男をぎらっと睨んで牽制するのを忘れず、連れ込まれた息吹は肩で息をついた主さまににじり寄って髪紐を引っ張った。
「ねえ、私は?」
「…」
「主さま、私を連れて行ってくれるでしょ?」
――勝手に髪紐を外されて息吹に奪われてしまい、他の者にそんなことをされたらそれこそ血祭りに上げる主さまは息吹の顎を掴んで上向かせると、牙を見せつけた。
「さっきの出来事を忘れたのか?不味くとも今すぐ食ってやろうか?」
「だって…一緒に行きたいんだもん!駄目?なんでも言うこと聞くから…お願い!」
――元々連れて行くつもりだったのだが、“なんでも言うことを聞く”と言われ…
様々な妄想が働いて顔を赤くしながら、頷いた。
「…約束だぞ」
「!うん、ありがとう主さま!」
抱き着かれて、むくむく。