主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
翌朝息吹は…熱を出した。
「知恵熱だね。全く…高千穂に行けるのがそんなに嬉しいのかい?」
「だって主さまと離れてた分一緒に居たいんだもん」
正直な息吹の感想に、山姫は氷水に浸した布を絞って額にあててやりながらにやりと笑った。
「あんた…もしかして主さまのことが好きなのかい?」
「えっ?やだちょっと…おっきな声で言わないでっ。…違うもん、私は…主さまの食べ物で…」
――その時主さまはまだ寝室で眠っていた。
こんな会話を聞かれたくなくて声を潜めた息吹の顔は赤くなっていて、したり顔の山姫は腰を上げてさらに息吹をからかった。
「ふうん、食べ物ね。じゃああんたはいずれ主さまに抱かれるわけだ。その時は留守にしてあげるからちゃんと言うんだよ」
「は、母様っ、やめてよっ」
笑いながら部屋を出て行った山姫を小さな声で詰りつつ、いずれそうなるのは確実で…
太って主さまに食われたいのか、それとも食われたくないために太らずにいるか…
息吹の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
「…毎日主さまに触られるのかな…」
どこかそれを期待してしまっている自分にも気付いていていたが考えても答えが出ないので、そのまま眠ってしまい、しばらくすると主さまが息吹の部屋に入ってきて傍らに座りながら額に手をあてた。
「知恵熱とは…まだまだ餓鬼だな」
すやすやと眠っている息吹がころんと横を向いて向い合せになり、帯が緩んだことで胸元も緩くなっていたその隙間から胸の谷間が見えて思わず声を上げそうになって口を押さえた。
急激に顔が熱くなりつつも腕を伸ばして肩まで布団をかけてやった時――
「……ん…、主さま…」
「っ!」
全身に火が付いたかのように熱くなり、慌てて部屋から飛び出して庭に下りると井戸に向かい、顔を洗った。
「なんだあいつ…寝言で俺の名を……夢に俺が出てきたのか…?」
――夢になら、毎夜息吹は出て来る。
互いに互いが出て来る夢を見ているのか?それはまるで…
「まさか…相思相愛とか…」
自分で口に出してしまって恥ずかしくなった主さまは、
今度は妄想がむくむく。
「知恵熱だね。全く…高千穂に行けるのがそんなに嬉しいのかい?」
「だって主さまと離れてた分一緒に居たいんだもん」
正直な息吹の感想に、山姫は氷水に浸した布を絞って額にあててやりながらにやりと笑った。
「あんた…もしかして主さまのことが好きなのかい?」
「えっ?やだちょっと…おっきな声で言わないでっ。…違うもん、私は…主さまの食べ物で…」
――その時主さまはまだ寝室で眠っていた。
こんな会話を聞かれたくなくて声を潜めた息吹の顔は赤くなっていて、したり顔の山姫は腰を上げてさらに息吹をからかった。
「ふうん、食べ物ね。じゃああんたはいずれ主さまに抱かれるわけだ。その時は留守にしてあげるからちゃんと言うんだよ」
「は、母様っ、やめてよっ」
笑いながら部屋を出て行った山姫を小さな声で詰りつつ、いずれそうなるのは確実で…
太って主さまに食われたいのか、それとも食われたくないために太らずにいるか…
息吹の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
「…毎日主さまに触られるのかな…」
どこかそれを期待してしまっている自分にも気付いていていたが考えても答えが出ないので、そのまま眠ってしまい、しばらくすると主さまが息吹の部屋に入ってきて傍らに座りながら額に手をあてた。
「知恵熱とは…まだまだ餓鬼だな」
すやすやと眠っている息吹がころんと横を向いて向い合せになり、帯が緩んだことで胸元も緩くなっていたその隙間から胸の谷間が見えて思わず声を上げそうになって口を押さえた。
急激に顔が熱くなりつつも腕を伸ばして肩まで布団をかけてやった時――
「……ん…、主さま…」
「っ!」
全身に火が付いたかのように熱くなり、慌てて部屋から飛び出して庭に下りると井戸に向かい、顔を洗った。
「なんだあいつ…寝言で俺の名を……夢に俺が出てきたのか…?」
――夢になら、毎夜息吹は出て来る。
互いに互いが出て来る夢を見ているのか?それはまるで…
「まさか…相思相愛とか…」
自分で口に出してしまって恥ずかしくなった主さまは、
今度は妄想がむくむく。