主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
息吹の様子が気になった雪男は、“開かずの間”と化している主さまの寝室の襖を少しだけそっと開けた。
…寝苦しいのか布団は蹴られて足元で丸まっていて、浴衣も…太股まで捲れ上がっていて、雪男は思わず1歩後ずさりをしたが…
「あ、あんな格好してたら熱なんか下がんねえよ…」
とりあえず浴衣を直して、布団をかけ直してやらないと一緒に高千穂など行けるはずもなく、辺りをきょろきょろと見回し、暗闇の中そっと主さまの寝室に入った。
ぼんやりと浮かぶ白い太股が隠れるように浴衣を直し、その時に少しだけ手が触れてしまって、息吹の身体が全身熱いことに気付き、凍らないように少し遠くから息を吹きかけると、息吹の表情が和らいだ。
「氷作ってやるよ」
小さな盥には息吹の額を冷やす用に水が入っていたので、それに息を吹きかけて凍らせると部屋の温度も少しずつ下がっていき、ただ…
半開きになった息吹の唇から目が離せなくなって、思わず身を乗り出した。
『本当に好きな女しか抱いては駄目。でないとお前の身体は一瞬で溶けてしまうよ』
交わっても溶けないのは、相思相愛の相手が同じ種族の雪女のみ。
「…お前と相思相愛になりたいな…。ちょっとだけ…ちょっとだけなら…いいよな?」
そっと顔を近付けて、そっと息吹の唇に、冷たい唇を重ねた。
瞬時に火傷するような痛みを唇に感じたがお構いなしにどんどん浸食して、止まらなくなってしまった。
「息吹…好きだ」
「主、さま…」
「っ!」
――呼ばれた名にがばっと身体を起こして、熱に浮かされる息吹の顔をまじまじと見つめて、がっくりと俯いた。
「…そっか…やっぱ主さまと…」
だが、諦めるつもりはなかった。
「高千穂では俺がお前を守ってやるよ。ずっと傍に居るから」
青い髪に青い瞳…
男なのに肌は透き通るように白く、主さまの次に女の妖たちに人気のある雪男は、そっと寝室を抜け出して、襖を閉めて一息。
「あいつ…可愛いな…」
頬が熱くなる。
溶けても構わない、と思った。
…寝苦しいのか布団は蹴られて足元で丸まっていて、浴衣も…太股まで捲れ上がっていて、雪男は思わず1歩後ずさりをしたが…
「あ、あんな格好してたら熱なんか下がんねえよ…」
とりあえず浴衣を直して、布団をかけ直してやらないと一緒に高千穂など行けるはずもなく、辺りをきょろきょろと見回し、暗闇の中そっと主さまの寝室に入った。
ぼんやりと浮かぶ白い太股が隠れるように浴衣を直し、その時に少しだけ手が触れてしまって、息吹の身体が全身熱いことに気付き、凍らないように少し遠くから息を吹きかけると、息吹の表情が和らいだ。
「氷作ってやるよ」
小さな盥には息吹の額を冷やす用に水が入っていたので、それに息を吹きかけて凍らせると部屋の温度も少しずつ下がっていき、ただ…
半開きになった息吹の唇から目が離せなくなって、思わず身を乗り出した。
『本当に好きな女しか抱いては駄目。でないとお前の身体は一瞬で溶けてしまうよ』
交わっても溶けないのは、相思相愛の相手が同じ種族の雪女のみ。
「…お前と相思相愛になりたいな…。ちょっとだけ…ちょっとだけなら…いいよな?」
そっと顔を近付けて、そっと息吹の唇に、冷たい唇を重ねた。
瞬時に火傷するような痛みを唇に感じたがお構いなしにどんどん浸食して、止まらなくなってしまった。
「息吹…好きだ」
「主、さま…」
「っ!」
――呼ばれた名にがばっと身体を起こして、熱に浮かされる息吹の顔をまじまじと見つめて、がっくりと俯いた。
「…そっか…やっぱ主さまと…」
だが、諦めるつもりはなかった。
「高千穂では俺がお前を守ってやるよ。ずっと傍に居るから」
青い髪に青い瞳…
男なのに肌は透き通るように白く、主さまの次に女の妖たちに人気のある雪男は、そっと寝室を抜け出して、襖を閉めて一息。
「あいつ…可愛いな…」
頬が熱くなる。
溶けても構わない、と思った。