主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
八咫烏の背は全く揺れず、ものすごく速く呼んでいるのに目を開けていられる。
それは主さまが先頭を行っているからだと皆に教えてもらって、改めて主さまの偉大さを実感していた。
「ねえ、雪ちゃんは半妖だけど長生きできるの?主さまは何歳くらいなの?」
「俺も何百年は生きると思うけど…主さまはわかんね。昔っから主さまは“主さま”だからさ」
――ふと自分の腰を抱いてくれている雪男の手の視線を落とすと…
自分の体温のせいで手は赤く腫れていて、息吹は慌てて雪男の手を剥いだ。
「雪ちゃん手が火傷してる!私の体温のせいでしょ!?どうして言ってくれなかったの?」
「や、別にこれっくらい…」
――息吹に触っていられるのだから、火傷くらいどうということはない。
なのでまたしっかりと息吹の腰を抱くと、息吹が八咫烏に呼びかけた。
「鴉さん、主さまのところまで行ってもらえる?」
ちょうど百鬼夜行の隊列の真ん中くらいに組み込まれていた息吹たちは列を抜けると先頭の主さまの横を飛び、主さまの着物の袖を引っ張った。
「主さま、一緒に乗って。雪ちゃん手を火傷してるの」
「もう1人で乗れるだろ」
「真っ暗で何も見えないもん。主さま、お願い」
…ちょうど誤解も解けていなかったことだし、何かと理由をつけて息吹と接触しようとしていた主さまは顎で八咫烏から降りるように命令した。
「…ちぇっ」
主さまが八咫烏に乗り込み、しっかりと息吹と抱き寄せると命令を聞いた八咫烏がまた飛び始めてしばらくお互い無言で居たのだが…
「あの…」
「あの話は…」
双方言葉が被ってしまい、2人は黙ってしまった。
「あの…」
「…なんだ」
「あの絵の女の人って…これから泊まる宿の女将さんなの?」
――まさにその言い訳をしようとしていた主さまは、
よくよく見ればあの絵の女が息吹にそっくりであることに気付いていない本人の顎を後ろから取って少し振り向かせると、にやりと笑った。
「気になるか?」
「…別にっ」
「あの絵の女は…特別だ」
「…ふうん」
息吹、もやもや。
それは主さまが先頭を行っているからだと皆に教えてもらって、改めて主さまの偉大さを実感していた。
「ねえ、雪ちゃんは半妖だけど長生きできるの?主さまは何歳くらいなの?」
「俺も何百年は生きると思うけど…主さまはわかんね。昔っから主さまは“主さま”だからさ」
――ふと自分の腰を抱いてくれている雪男の手の視線を落とすと…
自分の体温のせいで手は赤く腫れていて、息吹は慌てて雪男の手を剥いだ。
「雪ちゃん手が火傷してる!私の体温のせいでしょ!?どうして言ってくれなかったの?」
「や、別にこれっくらい…」
――息吹に触っていられるのだから、火傷くらいどうということはない。
なのでまたしっかりと息吹の腰を抱くと、息吹が八咫烏に呼びかけた。
「鴉さん、主さまのところまで行ってもらえる?」
ちょうど百鬼夜行の隊列の真ん中くらいに組み込まれていた息吹たちは列を抜けると先頭の主さまの横を飛び、主さまの着物の袖を引っ張った。
「主さま、一緒に乗って。雪ちゃん手を火傷してるの」
「もう1人で乗れるだろ」
「真っ暗で何も見えないもん。主さま、お願い」
…ちょうど誤解も解けていなかったことだし、何かと理由をつけて息吹と接触しようとしていた主さまは顎で八咫烏から降りるように命令した。
「…ちぇっ」
主さまが八咫烏に乗り込み、しっかりと息吹と抱き寄せると命令を聞いた八咫烏がまた飛び始めてしばらくお互い無言で居たのだが…
「あの…」
「あの話は…」
双方言葉が被ってしまい、2人は黙ってしまった。
「あの…」
「…なんだ」
「あの絵の女の人って…これから泊まる宿の女将さんなの?」
――まさにその言い訳をしようとしていた主さまは、
よくよく見ればあの絵の女が息吹にそっくりであることに気付いていない本人の顎を後ろから取って少し振り向かせると、にやりと笑った。
「気になるか?」
「…別にっ」
「あの絵の女は…特別だ」
「…ふうん」
息吹、もやもや。