主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
深い傷を負った主さまを宿へ運び入れた晴明は、直ちに解毒を開始した。
「主さま!?晴明、どうしたんだよ!」
「鬼八にやられた。集中を要するから部屋を出てくれ」
騒ぎを聞きつけた雪男やぬらりひょんたちが集まったが固い表情の晴明に事の重大さを察知して、主さまを案じつつも引き返して行く。
「鬼八を買い被ったな。あれは丸腰でも古代の鬼だぞ。あとそのなまくら刀をもう少しうまく使いこなせ」
「ぅ…、息吹…っ」
先程からうわ言のように何度も息吹の名を呼んでいる。
上半身はだけさせた状態で床に寝かせ、出血の止まらない右肩に札を貼ると印を結んで瞳を閉じた。
――主さまと息吹は明らかに惹かれ合っているように見えたが…
度々鬼八が夢に介入してくる事実…ただの他人の空似ではないだろう。
「息吹は鵜目姫の家系の者なのか?道理で…」
幼い息吹とはじめて会った時――
“何か”を感じていた。
それに幼子の息吹を主さまに食われたくないとも思っていたし、だから幽玄町から連れ出したのだ。
その後成長してゆく息吹を観察しつつも愛情込めて育ててきたが、何の変化もなかったのだが――
「十六夜…そなたは鬼八を封印した鬼の一族。息吹は鵜目姫と三毛入野命の一族…かもしれない。再び今生で相見えたか」
「いぶ、き…、戻って、来い…」
息吹に深く執着する主さま――
鬼八を封印した主さまの一族は、もしかしたら鵜目姫のことを――
「…早く良くなれ。でないと息吹が鵜目姫に乗っ取られてしまうやもしれぬぞ」
ゆっくりと主さまの瞳が開いた。
痛みに顔をしかめ、額には脂汗が浮いているが、解毒には成功したようだ
「晴明…、息吹は…息吹はどこだ」
「まだ鬼八の元だ。今生ではそなたが最強の妖だとしても、鬼八は鬼の祖だぞ。次に対峙する時はもっと警戒しろ」
――真顔の晴明にじわりと非難された主さまは、自身の右肩を見て舌打ちをした。
「早く息吹の元へ…」
「気がかりだろうが今は休んでくれ」
「ふざけるな!あれが鬼八のものになってしまう!」
妄執。
鬼八と、何ら変わらない。
「主さま!?晴明、どうしたんだよ!」
「鬼八にやられた。集中を要するから部屋を出てくれ」
騒ぎを聞きつけた雪男やぬらりひょんたちが集まったが固い表情の晴明に事の重大さを察知して、主さまを案じつつも引き返して行く。
「鬼八を買い被ったな。あれは丸腰でも古代の鬼だぞ。あとそのなまくら刀をもう少しうまく使いこなせ」
「ぅ…、息吹…っ」
先程からうわ言のように何度も息吹の名を呼んでいる。
上半身はだけさせた状態で床に寝かせ、出血の止まらない右肩に札を貼ると印を結んで瞳を閉じた。
――主さまと息吹は明らかに惹かれ合っているように見えたが…
度々鬼八が夢に介入してくる事実…ただの他人の空似ではないだろう。
「息吹は鵜目姫の家系の者なのか?道理で…」
幼い息吹とはじめて会った時――
“何か”を感じていた。
それに幼子の息吹を主さまに食われたくないとも思っていたし、だから幽玄町から連れ出したのだ。
その後成長してゆく息吹を観察しつつも愛情込めて育ててきたが、何の変化もなかったのだが――
「十六夜…そなたは鬼八を封印した鬼の一族。息吹は鵜目姫と三毛入野命の一族…かもしれない。再び今生で相見えたか」
「いぶ、き…、戻って、来い…」
息吹に深く執着する主さま――
鬼八を封印した主さまの一族は、もしかしたら鵜目姫のことを――
「…早く良くなれ。でないと息吹が鵜目姫に乗っ取られてしまうやもしれぬぞ」
ゆっくりと主さまの瞳が開いた。
痛みに顔をしかめ、額には脂汗が浮いているが、解毒には成功したようだ
「晴明…、息吹は…息吹はどこだ」
「まだ鬼八の元だ。今生ではそなたが最強の妖だとしても、鬼八は鬼の祖だぞ。次に対峙する時はもっと警戒しろ」
――真顔の晴明にじわりと非難された主さまは、自身の右肩を見て舌打ちをした。
「早く息吹の元へ…」
「気がかりだろうが今は休んでくれ」
「ふざけるな!あれが鬼八のものになってしまう!」
妄執。
鬼八と、何ら変わらない。