主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
「ねえねえ主しゃまー」
――幼い声がして目を開けると、小さかった頃の息吹が顔を覗き込んでいた。
「…ああ…これは夢か…」
「ねえ主しゃま、私のお父さんとお母さんってどこに居るのかなあ」
返事をせずに背を向けると息吹が前に回り込んできて髪紐を引っ張ってきた。
「やめろ」
「主しゃまが本当の父様だったらいいのに」
「…冗談じゃない。お前が大きくなったら、お前は俺の………なんでもない」
幼い頃の息吹が懐かしくて抱き上げると寝転がったまま腹の上に乗せた。
「父や母に会いたいのか?」
「わかんない…。橋に捨てたんだから妖に食べられてもいいって思ってたんだろうし…会っても迷惑だろうし…」
話しているうちに瞳に涙が溜まってきて、そのまま倒れ込んでくると胸にすがって泣き始めた。
「…泣くな。俺がずっと傍に居てやる」
「主しゃまが…?ほんと?私を捨てたりしない?」
「しない。お前が死ぬまでずっと傍に居る。…お前は俺をどう思う?好きか?」
「主しゃま?大好きだよ!」
にこっと笑った幼い息吹にときめくはずもなく、優しく髪を撫でてやると目を見張られた。
「主しゃまが優しい!どうしたの?お熱があるの!?」
「たまにはいいだろう?どうだ、腕枕をしてやるぞ」
「うん!ねえ主しゃま、主しゃまがお嫁さんを貰ったら、その人は私の母様になるのかなあ?」
主さまは息吹の鼻を思いきりつまんで尖った牙を見せて笑った。
「嫁ならもう決めている。誰か知りたいか?」
「…ううん、いい。主しゃまは私のものだもん!だからお嫁さんは私がもっと大きくなるまで貰わないでね!」
「ああ。お前が大きくなったら誰だか教えてやる」
小さな小さな息吹の身体を抱きしめて瞳を閉じると――
「十六夜、目を覚ませ」
主さまを現実へ引き戻したのは、晴明の不安に揺れた声だった。
「…夢を見ていた…」
気付けば夜になっていて、床を囲むようにして百鬼たちが心配そうに見つめていて、主さまは仏頂面になった。
「動ける。…お前たち、散れ!」
…息吹に会いたい。
――幼い声がして目を開けると、小さかった頃の息吹が顔を覗き込んでいた。
「…ああ…これは夢か…」
「ねえ主しゃま、私のお父さんとお母さんってどこに居るのかなあ」
返事をせずに背を向けると息吹が前に回り込んできて髪紐を引っ張ってきた。
「やめろ」
「主しゃまが本当の父様だったらいいのに」
「…冗談じゃない。お前が大きくなったら、お前は俺の………なんでもない」
幼い頃の息吹が懐かしくて抱き上げると寝転がったまま腹の上に乗せた。
「父や母に会いたいのか?」
「わかんない…。橋に捨てたんだから妖に食べられてもいいって思ってたんだろうし…会っても迷惑だろうし…」
話しているうちに瞳に涙が溜まってきて、そのまま倒れ込んでくると胸にすがって泣き始めた。
「…泣くな。俺がずっと傍に居てやる」
「主しゃまが…?ほんと?私を捨てたりしない?」
「しない。お前が死ぬまでずっと傍に居る。…お前は俺をどう思う?好きか?」
「主しゃま?大好きだよ!」
にこっと笑った幼い息吹にときめくはずもなく、優しく髪を撫でてやると目を見張られた。
「主しゃまが優しい!どうしたの?お熱があるの!?」
「たまにはいいだろう?どうだ、腕枕をしてやるぞ」
「うん!ねえ主しゃま、主しゃまがお嫁さんを貰ったら、その人は私の母様になるのかなあ?」
主さまは息吹の鼻を思いきりつまんで尖った牙を見せて笑った。
「嫁ならもう決めている。誰か知りたいか?」
「…ううん、いい。主しゃまは私のものだもん!だからお嫁さんは私がもっと大きくなるまで貰わないでね!」
「ああ。お前が大きくなったら誰だか教えてやる」
小さな小さな息吹の身体を抱きしめて瞳を閉じると――
「十六夜、目を覚ませ」
主さまを現実へ引き戻したのは、晴明の不安に揺れた声だった。
「…夢を見ていた…」
気付けば夜になっていて、床を囲むようにして百鬼たちが心配そうに見つめていて、主さまは仏頂面になった。
「動ける。…お前たち、散れ!」
…息吹に会いたい。