主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
鬼八と華月と鵜目姫
風が止んで恐々と瞳を開けると…
目の前には、手を繋いだ鬼八と鵜目姫が小川の前で談笑していた。
『鬼八様、私に会わせたい方っていうのはどなた?』
『俺の幼馴染なんだ。あなたは俺の妻となるのだから鬼族に偏見を持ってほしくないし、本当に良い奴なんだよ』
『あなたがそう言うのならお会いします』
薄桃色の羽衣のような美しい服を着た鵜目姫が鬼八に顔を寄せ、口づけをねだった。
――息吹はその光景を、“鬼八”の腕に抱かれながら見ていた。
「き、鬼八さん…これって…」
「これは俺の記憶。嘘偽りのない俺と鵜目姫が愛し合った日々の記憶だよ。俺は鵜目姫を攫ったりしてない」
自分の手を見つめると半透明状態になっていた。
あの手鏡は、全てを見ていたのだろう。
鬼八と鵜目姫が過ごした日々を全て全て――
『実はもう呼んであるからすぐに来るよ。俺に唇をねだってる姿を見られたいの?』
『だって…あなたの妻になるのですから。鬼八様…』
『鵜目姫…』
目の前で2人が唇を重ね合った。
とても幸せそうで、ただ人気のない森の奥だったので、2人が人目を気にしながら逢瀬を重ねていたことが窺い知れた。
思わず俯いてしまうと、隣の本物の鬼八から肩を優しく抱かれて引き寄せられた。
「見て」
「…うん」
気が昂って鵜目姫を押し倒しそうになっていた時、近くの茂みががさりと揺れて鬼八が身体を起こすと…
『鬼八』
『華月!ありがとう、来てくれたんだな!』
――茂みをかきわけて姿を現わしたのは…
「主さま!?」
鬼八とうりふたつの男が無表情のまま歩み寄ってきて、鵜目姫の前で立ち止まった。
…髪が長い。
それも主さまと全く同じで、兄弟のような鬼八と華月の姿は少しだけ息吹を和ませた。
『華月、この人が俺の妻になる鵜目姫だ。里から逃げる前にお前にだけは会わせておきたかった』
『…そうか。あなたが…』
華月がじっと鵜目姫を見つめた。
穴が開くほどにじっと。
――それが華月と鵜目姫との出会い。
悲劇のはじまり。
目の前には、手を繋いだ鬼八と鵜目姫が小川の前で談笑していた。
『鬼八様、私に会わせたい方っていうのはどなた?』
『俺の幼馴染なんだ。あなたは俺の妻となるのだから鬼族に偏見を持ってほしくないし、本当に良い奴なんだよ』
『あなたがそう言うのならお会いします』
薄桃色の羽衣のような美しい服を着た鵜目姫が鬼八に顔を寄せ、口づけをねだった。
――息吹はその光景を、“鬼八”の腕に抱かれながら見ていた。
「き、鬼八さん…これって…」
「これは俺の記憶。嘘偽りのない俺と鵜目姫が愛し合った日々の記憶だよ。俺は鵜目姫を攫ったりしてない」
自分の手を見つめると半透明状態になっていた。
あの手鏡は、全てを見ていたのだろう。
鬼八と鵜目姫が過ごした日々を全て全て――
『実はもう呼んであるからすぐに来るよ。俺に唇をねだってる姿を見られたいの?』
『だって…あなたの妻になるのですから。鬼八様…』
『鵜目姫…』
目の前で2人が唇を重ね合った。
とても幸せそうで、ただ人気のない森の奥だったので、2人が人目を気にしながら逢瀬を重ねていたことが窺い知れた。
思わず俯いてしまうと、隣の本物の鬼八から肩を優しく抱かれて引き寄せられた。
「見て」
「…うん」
気が昂って鵜目姫を押し倒しそうになっていた時、近くの茂みががさりと揺れて鬼八が身体を起こすと…
『鬼八』
『華月!ありがとう、来てくれたんだな!』
――茂みをかきわけて姿を現わしたのは…
「主さま!?」
鬼八とうりふたつの男が無表情のまま歩み寄ってきて、鵜目姫の前で立ち止まった。
…髪が長い。
それも主さまと全く同じで、兄弟のような鬼八と華月の姿は少しだけ息吹を和ませた。
『華月、この人が俺の妻になる鵜目姫だ。里から逃げる前にお前にだけは会わせておきたかった』
『…そうか。あなたが…』
華月がじっと鵜目姫を見つめた。
穴が開くほどにじっと。
――それが華月と鵜目姫との出会い。
悲劇のはじまり。