主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
遠く離れた地からわざわざ通って来てくれている鬼八と里から逃げると決めた鵜目姫は、
誰にも悟られないようにいつも通りの生活をつづけながらも、鬼八との逢瀬を繰り返していた。
『鬼八様…私は早くここから逃げたいのです。いつ私を連れ去って頂けるのですか?』
――最初は鬼八が鬼とは知らずに出会い、知った後も想いは変わることなく純愛を貫いている2人は手を取り合い、人の目を盗んだ森の奥で見つめ合っていた。
『今色々揃えている最中なんだ。あなたは何も持ち出さなくていいよ、俺が全て用意するから』
『鬼八様…私は怖いのです。ここに居ると…また来てしまう…』
『?誰が…?』
華月から迫られたことを言いたいのに口がどうしても動いてくれない。
だが鬼八は鵜目姫が何かに思い悩み、憂いていることには気付いていたので、そっと肩を抱くと引き寄せた。
『俺たちは本当は結ばれてはならない。だからこれからも困難に立ち向かわなければならない時も来ると思う。鵜目姫…今後悔してるの?』
問うとぱっと顔を上げてすぐに首を振った。
その反応が嬉しくて瞳を和らげると、鵜目姫は珊瑚の髪飾りを揺らしながら空を見上げた。
『鬼八様と一緒なら…何も怖くありません。ただ…もうここには居たくないのです。お願い、なるべく早く…』
切実に訴えかけてくる鵜目姫は可憐な唇を震わせて終始何かに怯えていた。
…華月と会わせてから様子がおかしくなったように感じていたが、
あの無口でぶっきらぼうな男が鵜目姫に何かしでかすわけもなく、
鬼八はすぐにその想像を打ち切った。
『わかったよ。鵜目姫…明日決行しよう。明日あなたをこの里から連れ出す。そして俺と夫婦になろう。約束だ』
小指を差し出すと、くすりと笑った鵜目姫も小指を絡めてきて、
いつからかそうして何かを約束する時は指を絡めるようになった風習を2人で笑い合うと、鬼八は鵜目姫に手を振って腰を上げた。
『誰にも悟られないように気を付けて。明日の夜…迎えに行く』
『はい…お待ちしております』
破滅への足音が、近付く。
誰にも悟られないようにいつも通りの生活をつづけながらも、鬼八との逢瀬を繰り返していた。
『鬼八様…私は早くここから逃げたいのです。いつ私を連れ去って頂けるのですか?』
――最初は鬼八が鬼とは知らずに出会い、知った後も想いは変わることなく純愛を貫いている2人は手を取り合い、人の目を盗んだ森の奥で見つめ合っていた。
『今色々揃えている最中なんだ。あなたは何も持ち出さなくていいよ、俺が全て用意するから』
『鬼八様…私は怖いのです。ここに居ると…また来てしまう…』
『?誰が…?』
華月から迫られたことを言いたいのに口がどうしても動いてくれない。
だが鬼八は鵜目姫が何かに思い悩み、憂いていることには気付いていたので、そっと肩を抱くと引き寄せた。
『俺たちは本当は結ばれてはならない。だからこれからも困難に立ち向かわなければならない時も来ると思う。鵜目姫…今後悔してるの?』
問うとぱっと顔を上げてすぐに首を振った。
その反応が嬉しくて瞳を和らげると、鵜目姫は珊瑚の髪飾りを揺らしながら空を見上げた。
『鬼八様と一緒なら…何も怖くありません。ただ…もうここには居たくないのです。お願い、なるべく早く…』
切実に訴えかけてくる鵜目姫は可憐な唇を震わせて終始何かに怯えていた。
…華月と会わせてから様子がおかしくなったように感じていたが、
あの無口でぶっきらぼうな男が鵜目姫に何かしでかすわけもなく、
鬼八はすぐにその想像を打ち切った。
『わかったよ。鵜目姫…明日決行しよう。明日あなたをこの里から連れ出す。そして俺と夫婦になろう。約束だ』
小指を差し出すと、くすりと笑った鵜目姫も小指を絡めてきて、
いつからかそうして何かを約束する時は指を絡めるようになった風習を2人で笑い合うと、鬼八は鵜目姫に手を振って腰を上げた。
『誰にも悟られないように気を付けて。明日の夜…迎えに行く』
『はい…お待ちしております』
破滅への足音が、近付く。