主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
「ねえ主しゃま、お話しようよ」
「!」
――息吹が幼い頃舌が回らずに“主しゃま”と呼んでいた時のように呼ばれ、背後から耳元で囁かれるとぞくっと背筋が震えた。
「…やめろと言っている」
「だってずっとこっち見てくれないし。つまんないよ雪ちゃん呼んでもいい?」
「…お前は雪男が好きなのか?」
「え?」
何を突然…という顔をした息吹の手を引っ張り、膝に乗せると今度は息吹がどきっとした顔をした。
「好きな男が居る、と言っていたな。誰だ。俺に隠し事をするな」
「…やだ、内緒。まだ教えてあげない」
ぷいっと顔を逸らして距離を作ろうとする息吹の顎を取り、強引に視線を合わせると耳元で息を吐いた。
「…っ、主さま…」
「……鵜目姫が乗り移っていたお前は妖艶だったがやっぱりまだ餓鬼だな。…どうした、顔が赤いぞ」
「だって…主さまが耳に息を吹きかけるから…」
春のような眼差しの息吹――
子供子供と自身に言い聞かせながらもようやく息吹に触れることができた主さまは、ゆっくりと顔を息吹に近付けた。
「な、なに…するの…?」
「味見だ」
半開きになった息吹の唇から目を離さず、また息吹も拒まず…ゆっくりと唇が重なった。
…ずっとこうしていたいと思いつつ、もっともっとと気持ちが先走って深く唇を重ね、震える息吹の身体を抱きしめながら黒髪に指を潜らせる。
「…美味しい?」
「まだ味が薄い。早く成長しろ。…あと、好きな男を教えろ。お前は誰にもやらないからな」
「内緒、だもん…。主さま…どきどきする。私、病気なのかな…」
息吹に触れていると我を忘れそうになり、押し倒してしまいそうな自身をなんとか抑制しながら息吹の耳たぶを甘噛みした。
「きゃんっ!」
「教えないと今しているようなことをずっとするからな」
「……教えない、もん」
――主さまに告白するのは幽玄町に帰ってからにしようと思っていた息吹はそう突っ張り、そして主さまに触られることが嬉しくて内心喜んでいた。
「強情娘が」
「むっつり」
笑い合う。
「!」
――息吹が幼い頃舌が回らずに“主しゃま”と呼んでいた時のように呼ばれ、背後から耳元で囁かれるとぞくっと背筋が震えた。
「…やめろと言っている」
「だってずっとこっち見てくれないし。つまんないよ雪ちゃん呼んでもいい?」
「…お前は雪男が好きなのか?」
「え?」
何を突然…という顔をした息吹の手を引っ張り、膝に乗せると今度は息吹がどきっとした顔をした。
「好きな男が居る、と言っていたな。誰だ。俺に隠し事をするな」
「…やだ、内緒。まだ教えてあげない」
ぷいっと顔を逸らして距離を作ろうとする息吹の顎を取り、強引に視線を合わせると耳元で息を吐いた。
「…っ、主さま…」
「……鵜目姫が乗り移っていたお前は妖艶だったがやっぱりまだ餓鬼だな。…どうした、顔が赤いぞ」
「だって…主さまが耳に息を吹きかけるから…」
春のような眼差しの息吹――
子供子供と自身に言い聞かせながらもようやく息吹に触れることができた主さまは、ゆっくりと顔を息吹に近付けた。
「な、なに…するの…?」
「味見だ」
半開きになった息吹の唇から目を離さず、また息吹も拒まず…ゆっくりと唇が重なった。
…ずっとこうしていたいと思いつつ、もっともっとと気持ちが先走って深く唇を重ね、震える息吹の身体を抱きしめながら黒髪に指を潜らせる。
「…美味しい?」
「まだ味が薄い。早く成長しろ。…あと、好きな男を教えろ。お前は誰にもやらないからな」
「内緒、だもん…。主さま…どきどきする。私、病気なのかな…」
息吹に触れていると我を忘れそうになり、押し倒してしまいそうな自身をなんとか抑制しながら息吹の耳たぶを甘噛みした。
「きゃんっ!」
「教えないと今しているようなことをずっとするからな」
「……教えない、もん」
――主さまに告白するのは幽玄町に帰ってからにしようと思っていた息吹はそう突っ張り、そして主さまに触られることが嬉しくて内心喜んでいた。
「強情娘が」
「むっつり」
笑い合う。