主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
これ以上行為を進めると身を滅ぼす可能性がある。
何せあの稀代の術師安部晴明を本気で怒らせるかもしれないからだ。
…だが息吹の唇は甘く、自制心の少ない主さまは息吹の腰を抱いて引き寄せると唇が変形するほど強く押し付け、息吹を焦がした。
「や、主さま…っ」
「名を呼べ」
また強引に名を呼ばせようとした時、遠雷が聴こえた。
仕方なく顔を上げると上空には真っ黒な雲がみるみる広がっていき、今にも雨が降りそうになったので慌てた息吹が赤子を抱っこすると主さまの肩を押した。
「主さま、雨が…」
「…屋敷までには間に合わない。確か近くに寺があったはずだ」
さっと息吹を抱き上げて空を駆け上がった時、大粒の雨が一気に降ってきた。
息吹は赤子が濡れないように着物の懐の中に入れて隠し、主さまは寺に向かってものすごい速度で走り、今にも朽ちそうな無人の寺に着いた頃には主さまと息吹はずぶ濡れになっていた。
「くしゅんっ」
「早く中に入れ。火を熾す」
中へ入ると奥には仏像があり、部屋の真ん中に囲炉裏を見つけると主さまは指先に炎を燈して息吹を座らせた。
「よかった…この子は濡れてないみたい」
「それよりお前だ。早くそれを脱げ」
「えっ!?や、やだよ脱いだら裸になっちゃう!」
一瞬主さまはきょとんとしてしまい、その後息吹が裸になった想像が頭を駆け巡ってしまうと濡れた髪をがりがりとかき上げながら仕方なく息吹の肩に手をかけた。
「それを乾かさないとお前が風邪を引く。ちょっと待ってろ」
腰を上げて襖を開けると中にはみすぼらしい粗末な掛け布団があり、それを手にして息吹の肩にかけてやり、背中を向けた。
「見たりしないから早く脱げ。風邪を引いても看病してやらないからな」
「主さまのけち」
背後で衣擦れの音がしたので息吹が着物を脱いでいる想像をついしてしまった主さまが自分を落ち着けるために深呼吸をしていると、背中に息吹が触れてきた。
「お、終わりました…」
「…ああ」
振り向くと息吹は身体にしっかりと掛け布団を巻き付けていて、安心した主さまがふっと笑んだ時――
「主さまも入って」
「…は?」
「主さまも風邪引いちゃうから…、は、入って。見ちゃ駄目だよ、絶対駄目だからね!」
好機到来。
何せあの稀代の術師安部晴明を本気で怒らせるかもしれないからだ。
…だが息吹の唇は甘く、自制心の少ない主さまは息吹の腰を抱いて引き寄せると唇が変形するほど強く押し付け、息吹を焦がした。
「や、主さま…っ」
「名を呼べ」
また強引に名を呼ばせようとした時、遠雷が聴こえた。
仕方なく顔を上げると上空には真っ黒な雲がみるみる広がっていき、今にも雨が降りそうになったので慌てた息吹が赤子を抱っこすると主さまの肩を押した。
「主さま、雨が…」
「…屋敷までには間に合わない。確か近くに寺があったはずだ」
さっと息吹を抱き上げて空を駆け上がった時、大粒の雨が一気に降ってきた。
息吹は赤子が濡れないように着物の懐の中に入れて隠し、主さまは寺に向かってものすごい速度で走り、今にも朽ちそうな無人の寺に着いた頃には主さまと息吹はずぶ濡れになっていた。
「くしゅんっ」
「早く中に入れ。火を熾す」
中へ入ると奥には仏像があり、部屋の真ん中に囲炉裏を見つけると主さまは指先に炎を燈して息吹を座らせた。
「よかった…この子は濡れてないみたい」
「それよりお前だ。早くそれを脱げ」
「えっ!?や、やだよ脱いだら裸になっちゃう!」
一瞬主さまはきょとんとしてしまい、その後息吹が裸になった想像が頭を駆け巡ってしまうと濡れた髪をがりがりとかき上げながら仕方なく息吹の肩に手をかけた。
「それを乾かさないとお前が風邪を引く。ちょっと待ってろ」
腰を上げて襖を開けると中にはみすぼらしい粗末な掛け布団があり、それを手にして息吹の肩にかけてやり、背中を向けた。
「見たりしないから早く脱げ。風邪を引いても看病してやらないからな」
「主さまのけち」
背後で衣擦れの音がしたので息吹が着物を脱いでいる想像をついしてしまった主さまが自分を落ち着けるために深呼吸をしていると、背中に息吹が触れてきた。
「お、終わりました…」
「…ああ」
振り向くと息吹は身体にしっかりと掛け布団を巻き付けていて、安心した主さまがふっと笑んだ時――
「主さまも入って」
「…は?」
「主さまも風邪引いちゃうから…、は、入って。見ちゃ駄目だよ、絶対駄目だからね!」
好機到来。