主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
「その手を離せ。何故私を引き留める?私は元々道長の元に嫁がせるが得策だと思っていた。人には人。これが自然の理だ」
「…駄目だ、息吹は嫁がせるな。あれは…俺のものだぞ」
「言っていることが支離滅裂なことに気付いてはいないのか?独占欲だけは大きいと見えるが、そなたを想って泣き続ける息吹を見るのだけは絶対に避けたい。それ位ならば息吹を幸せにしてやれて、そなた以上に愛してやれる男の元へ嫁がせた方がいい」
「俺は!あれを愛している!だが俺と息吹は人と鬼だ!流れている時の速さが違う!」
「そんなことは元より了承済みだと思っていたが。そなたと息吹は同じ悩みを抱えている。だがその悩みを悩み抜いて出した決断だと思っていた。今の今まではな」
見据える晴明の瞳には明らかな軽蔑の色が揺らめき、床で遊ばせていた赤子が主さまの殺気にあてられて声を上げて泣き出した。
だが感情的になっている主さまは殺気を抑えることができず、晴明の胸元を掴むと苦悶に歪んだ表情で牙を剥いた。
「どうすればいいんだ!?俺は必ず壊れてしまう!息吹が死んだ後お前が俺を殺してくれるか?約束しろ!」
「それを望むならば、そうしてやろう。その後私は百鬼から殺されるだろうが、それもまた運命として受け入れる。十六夜…息吹は忘れ形見を必ず遺してくれる。そなたと息吹の子だ。だからそなたは狂わぬ。そうだろう?」
「…俺と…息吹の…」
「言っておくが1年後以降の話だぞ。再度言うが、そなたが死を望むならばそうしてやる。私は息吹の幸せを願っている。息吹はそなたの傍に居るのが1番幸せだとも思っている。だから…諦めるな」
力なくうなだれた主さまの肩を叩いた晴明は、赤子を腕に抱いて、それを主さまの手に押し付けた。
「今から練習しておけ。息吹を嫁に娶った後すぐに子ができるだろうからな」
「…練習なら息吹が赤子の時に嫌というほどしてきた」
「ふむ、ならば必要ないか。必要なのは私の方かもしれぬな」
晴明が赤子を取り返してあやすとようやく笑い声が漏れて機嫌が戻った赤子を見て瞳を細めた主さまはようやく深呼吸をして殺気を抑えた。
…諦めたくない。
息吹のことを――
「…駄目だ、息吹は嫁がせるな。あれは…俺のものだぞ」
「言っていることが支離滅裂なことに気付いてはいないのか?独占欲だけは大きいと見えるが、そなたを想って泣き続ける息吹を見るのだけは絶対に避けたい。それ位ならば息吹を幸せにしてやれて、そなた以上に愛してやれる男の元へ嫁がせた方がいい」
「俺は!あれを愛している!だが俺と息吹は人と鬼だ!流れている時の速さが違う!」
「そんなことは元より了承済みだと思っていたが。そなたと息吹は同じ悩みを抱えている。だがその悩みを悩み抜いて出した決断だと思っていた。今の今まではな」
見据える晴明の瞳には明らかな軽蔑の色が揺らめき、床で遊ばせていた赤子が主さまの殺気にあてられて声を上げて泣き出した。
だが感情的になっている主さまは殺気を抑えることができず、晴明の胸元を掴むと苦悶に歪んだ表情で牙を剥いた。
「どうすればいいんだ!?俺は必ず壊れてしまう!息吹が死んだ後お前が俺を殺してくれるか?約束しろ!」
「それを望むならば、そうしてやろう。その後私は百鬼から殺されるだろうが、それもまた運命として受け入れる。十六夜…息吹は忘れ形見を必ず遺してくれる。そなたと息吹の子だ。だからそなたは狂わぬ。そうだろう?」
「…俺と…息吹の…」
「言っておくが1年後以降の話だぞ。再度言うが、そなたが死を望むならばそうしてやる。私は息吹の幸せを願っている。息吹はそなたの傍に居るのが1番幸せだとも思っている。だから…諦めるな」
力なくうなだれた主さまの肩を叩いた晴明は、赤子を腕に抱いて、それを主さまの手に押し付けた。
「今から練習しておけ。息吹を嫁に娶った後すぐに子ができるだろうからな」
「…練習なら息吹が赤子の時に嫌というほどしてきた」
「ふむ、ならば必要ないか。必要なのは私の方かもしれぬな」
晴明が赤子を取り返してあやすとようやく笑い声が漏れて機嫌が戻った赤子を見て瞳を細めた主さまはようやく深呼吸をして殺気を抑えた。
…諦めたくない。
息吹のことを――