主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
一定の時間が経過するまで耳と尻尾は消えず、その間息吹はそれらを触りまくってしきりに喜んでいた。
こんなに元気な笑顔を見たのも久しぶりなので、仕方なく…いや、むしろ内心触ってもらえることを喜びつつ気難しい顔を作っていると、そこにふらりと相模が現れた。
「!そ、そいつ、妖怪なのか!?」
「え?あ…、えっと…違うよ、これは父様の悪戯で…」
耳と尻尾が生えた主さまが振り向くと、相模は一瞬後ずさりをしたが息吹が全開の笑顔なので、なんとか踏み止まり、頬をかきながら息吹に声をかけた。
「もういいのか?顔色だいぶいいみたいだけど…」
「うん、もう平気。沢山寝たし明日には本調子に戻ってると思う。それより見て!耳と尻尾!消えないでほしいな」
「…ふざけるな、こんなのが生えていたら示しがつかない」
「そう?すっごく可愛いのに」
言葉とは裏腹に尻尾がふりふり揺れているのはどうにもならず、相模が居るにも関わらず息吹は主さまの膝に上り込んで身体に腕を回して抱き着いた。
…もちろん、息吹に片思いしている相模にとっては絶望的な光景だったわけだが…
主さまは相模が落ち込んで俯いた顔を見て優越感に浸っていた。
「父様が戻ってくるまで居てくれるの?」
「…夕刻までは居られるが…それ以降は…」
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう、十六夜さん」
――耳が熱くなるのを感じながらも、相模が見ている前で息吹の顎を取って上向かせた時、その先に何が起こるのか悟った相模が走り去って行った。
きょとんとした息吹の顔を自分の方に向けさせた主さまは、瞳を真ん丸にしたままの息吹の唇を奪った。
「主さ…」
「いくら餓鬼でも男は男だ。あまり構うと…殺すぞ」
「そんな……、主さま…」
激しい独占欲を隠しもしない主さまの情熱的な口づけに身体の力が抜けてしまってもたれ掛った息吹は、胸元から覗く意外に鍛えられた胸に頬を寄せて、思った。
“やっぱりこの人から離れるなんて無理”と。
「私…美味しく育ったでしょ?今が食べ頃?」
「…1年後が食べ頃だな。完熟するまで待つ。青い果実は口に苦いだけだからな」
そしてまた重なった唇は優しくて、嬉しくて、1年待てないのは自分の方では…と思ったりした。
こんなに元気な笑顔を見たのも久しぶりなので、仕方なく…いや、むしろ内心触ってもらえることを喜びつつ気難しい顔を作っていると、そこにふらりと相模が現れた。
「!そ、そいつ、妖怪なのか!?」
「え?あ…、えっと…違うよ、これは父様の悪戯で…」
耳と尻尾が生えた主さまが振り向くと、相模は一瞬後ずさりをしたが息吹が全開の笑顔なので、なんとか踏み止まり、頬をかきながら息吹に声をかけた。
「もういいのか?顔色だいぶいいみたいだけど…」
「うん、もう平気。沢山寝たし明日には本調子に戻ってると思う。それより見て!耳と尻尾!消えないでほしいな」
「…ふざけるな、こんなのが生えていたら示しがつかない」
「そう?すっごく可愛いのに」
言葉とは裏腹に尻尾がふりふり揺れているのはどうにもならず、相模が居るにも関わらず息吹は主さまの膝に上り込んで身体に腕を回して抱き着いた。
…もちろん、息吹に片思いしている相模にとっては絶望的な光景だったわけだが…
主さまは相模が落ち込んで俯いた顔を見て優越感に浸っていた。
「父様が戻ってくるまで居てくれるの?」
「…夕刻までは居られるが…それ以降は…」
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう、十六夜さん」
――耳が熱くなるのを感じながらも、相模が見ている前で息吹の顎を取って上向かせた時、その先に何が起こるのか悟った相模が走り去って行った。
きょとんとした息吹の顔を自分の方に向けさせた主さまは、瞳を真ん丸にしたままの息吹の唇を奪った。
「主さ…」
「いくら餓鬼でも男は男だ。あまり構うと…殺すぞ」
「そんな……、主さま…」
激しい独占欲を隠しもしない主さまの情熱的な口づけに身体の力が抜けてしまってもたれ掛った息吹は、胸元から覗く意外に鍛えられた胸に頬を寄せて、思った。
“やっぱりこの人から離れるなんて無理”と。
「私…美味しく育ったでしょ?今が食べ頃?」
「…1年後が食べ頃だな。完熟するまで待つ。青い果実は口に苦いだけだからな」
そしてまた重なった唇は優しくて、嬉しくて、1年待てないのは自分の方では…と思ったりした。