主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
命を懸けて、命を分け与えてくれた雪男――
“私を刺して”とお願いしているのに首を振って断固拒否の姿勢を見せる主さま――
その間にも阿修羅の存在はどんどん膨れ上がり、晴明が張ってくれた結界を破りつつある。
このままでは本当にいけない。
それに…雪男の死を、無駄にはしない。
「…わかった。主さま…主さまができないなら…私が頑張るしか…」
「息吹…わかってくれ。俺はお前を刺したりなんかできない。お前がお前自身の力で阿修羅を打ち破るんだ。息吹…!」
かっかと熱くなってきだした身体を全力で抱きしめてくれた主さまが、耳元でぼそりと囁いた。
「これが終わったら…夫婦になろう。1年なんか待っていられない。お前を俺の妻にする」
「!主さま…!うん…、私、頑張る…!」
全てが終わったら、主さまのお嫁さんになれる――
息吹の気力が阿修羅の勢いを削ぎ、息吹の勢力がどんどん拡大していった。
そうするうちに暗闇が開けてきて、目の前に憎悪に表情を歪めた大柄で無骨な男が仁王立ちしているのが見えた。
『我を抑え込むというのか』
「私…主さまの…十六夜さんのお嫁さんになるの。雪ちゃんは私のせいで死んだ…。私に力を分けてくれるために死んだの。だから雪ちゃんのためにも…十六夜さんのためにも…私のためにも、あなたにはここから出て行ってもらう!」
『うぬぅ…っ』
息吹の全身から光が溢れ出し、矢のように次々と阿修羅に突き刺さる。
暑い季節はいつも番傘を差しながらも庭に咲いている花の水遣りを手伝ってくれた雪男…
蝶よ花よと育ててくれて、教養を身につけることもできて、頭に耳、お尻に尻尾が生えて後で絶対撫で回そうと決める程かっこいい晴明…
そして…
いつも叱られて、いつも怒っていたけれど…絶えず目を配ってくれて、時々とても優しくなる主さま…
みんなのためにも、みんなとまたわいわい楽しく過ごすために…
逝ってしまった雪男のために…力を解き放つ時だ。
『…!?そなた…』
「私…人じゃないみたいなの。だからあなたをきっと追い出すことができる。出て行って。私から出て行って!今すぐ!」
『ぎ…ぁ…っ』
伸ばした掌から力が噴き出し、阿修羅に襲い掛かった。
…人ではないと確信した瞬間だった。
“私を刺して”とお願いしているのに首を振って断固拒否の姿勢を見せる主さま――
その間にも阿修羅の存在はどんどん膨れ上がり、晴明が張ってくれた結界を破りつつある。
このままでは本当にいけない。
それに…雪男の死を、無駄にはしない。
「…わかった。主さま…主さまができないなら…私が頑張るしか…」
「息吹…わかってくれ。俺はお前を刺したりなんかできない。お前がお前自身の力で阿修羅を打ち破るんだ。息吹…!」
かっかと熱くなってきだした身体を全力で抱きしめてくれた主さまが、耳元でぼそりと囁いた。
「これが終わったら…夫婦になろう。1年なんか待っていられない。お前を俺の妻にする」
「!主さま…!うん…、私、頑張る…!」
全てが終わったら、主さまのお嫁さんになれる――
息吹の気力が阿修羅の勢いを削ぎ、息吹の勢力がどんどん拡大していった。
そうするうちに暗闇が開けてきて、目の前に憎悪に表情を歪めた大柄で無骨な男が仁王立ちしているのが見えた。
『我を抑え込むというのか』
「私…主さまの…十六夜さんのお嫁さんになるの。雪ちゃんは私のせいで死んだ…。私に力を分けてくれるために死んだの。だから雪ちゃんのためにも…十六夜さんのためにも…私のためにも、あなたにはここから出て行ってもらう!」
『うぬぅ…っ』
息吹の全身から光が溢れ出し、矢のように次々と阿修羅に突き刺さる。
暑い季節はいつも番傘を差しながらも庭に咲いている花の水遣りを手伝ってくれた雪男…
蝶よ花よと育ててくれて、教養を身につけることもできて、頭に耳、お尻に尻尾が生えて後で絶対撫で回そうと決める程かっこいい晴明…
そして…
いつも叱られて、いつも怒っていたけれど…絶えず目を配ってくれて、時々とても優しくなる主さま…
みんなのためにも、みんなとまたわいわい楽しく過ごすために…
逝ってしまった雪男のために…力を解き放つ時だ。
『…!?そなた…』
「私…人じゃないみたいなの。だからあなたをきっと追い出すことができる。出て行って。私から出て行って!今すぐ!」
『ぎ…ぁ…っ』
伸ばした掌から力が噴き出し、阿修羅に襲い掛かった。
…人ではないと確信した瞬間だった。