主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
身体が痛い…
目を開けたいのに瞼がとても重たくて、身体がぎしぎし音を立てて身動きひとつ取れない…。
「うう…ん…」
「…息吹」
「身体が…痛い……」
「息吹」
――はっきりと確かに、とてもとても大切な人の声が聴こえた。
なんだか夢現で、何が起きたかもあまり覚えていない息吹は…右手に伝わるあたたかい感触だけは、感じていた。
「主…さま…」
「…目が覚めたか」
「…主さま…?私…」
なんとか首を右側に傾けると、ここが主さまの部屋で、しかも主さまが隣に寝ていて、しかも手を握ってくれていて、無性にほっとした息吹の瞳からいきなり大粒の涙が零れて主さま大慌て。
「な、何故泣く」
「わかんない…。主さま…ずっと手を握っててくれたの?」
「…ずっとじゃない。…さっきからだ」
相変わらずの仏頂面で素っ気なく言われたが、手は握られたままで、なんだか久しぶりに見た気がする主さまの顔をじっと見つめた。
「主さま…怪我してる…」
「…俺は妖だ。傷などすぐに治る」
「…私…人じゃ…なかったんだね…。ちょっとだけ覚えてるよ。私は…木花咲耶姫の生まれ変わり…。神様…なの…?」
「…お前は息吹だ。俺にとっては、息吹という女であるだけ。…泣くな、どうしたらいいかわからなくなる」
ぽろぽろと涙が零れる息吹の頬に手を伸ばした主さまは、息吹と同じく少し身体を動かすだけで激痛が走ったが、自分の床を這い出て息吹の床に潜り込むと、息吹がすぐに抱き着いてきてぎゅうっと抱きしめた。
「…怖い思いをさせた。すまなかった」
「ううん…!主さまが…十六夜さんが無事でよかった…!」
「息吹…」
――恐らく空海は死んだだろう。
阿修羅が召喚された後護摩壇で倒れ込んだままぴくりとも動かなかったが、それを今息吹に伝えてまた悲しませたくはない。
「私…どうなったの?長生きできる身体になったの?」
「…わからない。後で晴明に調べてもらおう。…とりあえずこんなとこを見られたらせっかく助かった命が危うくなる」
離れようとした主さまの身体にしがみついた息吹はふるふると首を振って胸に顔を押し付けた。
「もうちょっとこのままでいて…」
…胸が涙で濡れた。
泣き止むまで、背中を撫で続けた。
目を開けたいのに瞼がとても重たくて、身体がぎしぎし音を立てて身動きひとつ取れない…。
「うう…ん…」
「…息吹」
「身体が…痛い……」
「息吹」
――はっきりと確かに、とてもとても大切な人の声が聴こえた。
なんだか夢現で、何が起きたかもあまり覚えていない息吹は…右手に伝わるあたたかい感触だけは、感じていた。
「主…さま…」
「…目が覚めたか」
「…主さま…?私…」
なんとか首を右側に傾けると、ここが主さまの部屋で、しかも主さまが隣に寝ていて、しかも手を握ってくれていて、無性にほっとした息吹の瞳からいきなり大粒の涙が零れて主さま大慌て。
「な、何故泣く」
「わかんない…。主さま…ずっと手を握っててくれたの?」
「…ずっとじゃない。…さっきからだ」
相変わらずの仏頂面で素っ気なく言われたが、手は握られたままで、なんだか久しぶりに見た気がする主さまの顔をじっと見つめた。
「主さま…怪我してる…」
「…俺は妖だ。傷などすぐに治る」
「…私…人じゃ…なかったんだね…。ちょっとだけ覚えてるよ。私は…木花咲耶姫の生まれ変わり…。神様…なの…?」
「…お前は息吹だ。俺にとっては、息吹という女であるだけ。…泣くな、どうしたらいいかわからなくなる」
ぽろぽろと涙が零れる息吹の頬に手を伸ばした主さまは、息吹と同じく少し身体を動かすだけで激痛が走ったが、自分の床を這い出て息吹の床に潜り込むと、息吹がすぐに抱き着いてきてぎゅうっと抱きしめた。
「…怖い思いをさせた。すまなかった」
「ううん…!主さまが…十六夜さんが無事でよかった…!」
「息吹…」
――恐らく空海は死んだだろう。
阿修羅が召喚された後護摩壇で倒れ込んだままぴくりとも動かなかったが、それを今息吹に伝えてまた悲しませたくはない。
「私…どうなったの?長生きできる身体になったの?」
「…わからない。後で晴明に調べてもらおう。…とりあえずこんなとこを見られたらせっかく助かった命が危うくなる」
離れようとした主さまの身体にしがみついた息吹はふるふると首を振って胸に顔を押し付けた。
「もうちょっとこのままでいて…」
…胸が涙で濡れた。
泣き止むまで、背中を撫で続けた。