主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
屋敷に戻ると、息吹が待ち構えていたかのようにして庭に下りていた。
「十六夜さんはどうだったの?良くなってた?」
「熱も下がって元気そうにしていたよ。…で、そなたとも明日少し話をしてやってもいいそうだ。衝立越しだがいいね?」
――断られるものとばかり思っていた息吹はぱっと顔を輝かせると晴明に駆け寄ってきゅっと袖を握った。
「ありがとうございます。でも…十六夜さんは困ってなかった?」
一緒に部屋に上がり、着替えを手伝ってもらいながら、晴明は焦らすようにして答えをはぐらかす。
「そうだねえ…驚いてはいたけれど…息吹はあの堅物のどこがいいんだい?それに…あれはたいそうもてる男だよ」
「…十六夜さんは私を助けてくれたし、優しい妖だからお話してみたいだけ。…なに?どうして笑ってるの?」
「ふふふ、なんでもないよ。さあ今日はもう寝なさい。御所へ行く前に十六夜と話すのならば早朝になるからね」
「はい。じゃあおやすみなさい。父様…ありがとう」
――本当に良い娘に育ってくれた。
妻は居ないが、もし自分に子が居たならば、こんな娘に育ってほしいと思って四苦八苦して育てた息吹は教養もあり、容姿も良く、これからは縁談がどんどん舞い込んでくるだろう。
「さて、十六夜はどう出るかな」
――翌朝早朝、主さまが晴明の屋敷を訪れると、庭に咲いている色とりどりの花に息吹が水をやっていた。
「早いな、もう来たのか?」
「…百鬼夜行の件、手筈は整えた。万が一帝がごねた場合のみ駆り出す」
「助かる。あの若造、ごねるに決まっているからな。そなたが結界を破り、そこからなだれ込むような形にしてくれ。私の立場はどうでもいい。朝廷になど元々興味はなかったからな」
母の仇を討つためにあれこれ画策していたのは確かだが、警備の緩い朝廷にはいつでも忍び込める。
「父様?独り言?それとももう十六夜さんが来てるの?」
「ああ、来てるよ。息吹、絶対に十六夜の姿を見てはいけない。見てしまうと…もう十六夜はここには来なくなるからね。いいね?」
「はい。十六夜さん、おはようございます」
笑いかけてくれた。
「十六夜さんはどうだったの?良くなってた?」
「熱も下がって元気そうにしていたよ。…で、そなたとも明日少し話をしてやってもいいそうだ。衝立越しだがいいね?」
――断られるものとばかり思っていた息吹はぱっと顔を輝かせると晴明に駆け寄ってきゅっと袖を握った。
「ありがとうございます。でも…十六夜さんは困ってなかった?」
一緒に部屋に上がり、着替えを手伝ってもらいながら、晴明は焦らすようにして答えをはぐらかす。
「そうだねえ…驚いてはいたけれど…息吹はあの堅物のどこがいいんだい?それに…あれはたいそうもてる男だよ」
「…十六夜さんは私を助けてくれたし、優しい妖だからお話してみたいだけ。…なに?どうして笑ってるの?」
「ふふふ、なんでもないよ。さあ今日はもう寝なさい。御所へ行く前に十六夜と話すのならば早朝になるからね」
「はい。じゃあおやすみなさい。父様…ありがとう」
――本当に良い娘に育ってくれた。
妻は居ないが、もし自分に子が居たならば、こんな娘に育ってほしいと思って四苦八苦して育てた息吹は教養もあり、容姿も良く、これからは縁談がどんどん舞い込んでくるだろう。
「さて、十六夜はどう出るかな」
――翌朝早朝、主さまが晴明の屋敷を訪れると、庭に咲いている色とりどりの花に息吹が水をやっていた。
「早いな、もう来たのか?」
「…百鬼夜行の件、手筈は整えた。万が一帝がごねた場合のみ駆り出す」
「助かる。あの若造、ごねるに決まっているからな。そなたが結界を破り、そこからなだれ込むような形にしてくれ。私の立場はどうでもいい。朝廷になど元々興味はなかったからな」
母の仇を討つためにあれこれ画策していたのは確かだが、警備の緩い朝廷にはいつでも忍び込める。
「父様?独り言?それとももう十六夜さんが来てるの?」
「ああ、来てるよ。息吹、絶対に十六夜の姿を見てはいけない。見てしまうと…もう十六夜はここには来なくなるからね。いいね?」
「はい。十六夜さん、おはようございます」
笑いかけてくれた。