主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
帝の回りを近衛兵たちが取り囲み、皆が殺気立って主さまを見つけようとしていたが、説得に失敗した晴明だったが、またそれも予想済みだったので部屋を出て行こうとした。
「息吹姫を明日も参内させるように。私の魅力に気づかせてみせる」
「…御意。では、これにて」
部屋を出た途端…晴明はとうとう込み上げる笑いを堪えきれずに、肩を揺らしながら手で口元を覆って涙目になっていた。
「若造め、お前の魅力はその地位だけだとまだ気付かぬのか」
「晴明…何故止めた?俺はあいつに名を呼ばれたんだぞ」
姿を消したまま主さまが後ろからついて来ていて、晴明は当たり前のように言ってのけた。
「百鬼夜行を見たいからに決まっているではないか。私も駆り出されるだろうが、結界を強めるふりをして穴をいくつか開けておいてやる。そこからなだれ込め」
…本当に性格が悪い。
幼くして妖狐の母を一条朝から討たれ、目が開いたばかりの晴明に目をかけて育ててやった晴明は妖力が強く、人の生活は無理だと考えていたが…
今やこうして人から重宝され、溶け込んだふりをしながら一条朝の崩壊を目論んでいるのだ。
絶対に敵には回したくはない。
「息吹、大丈夫か?」
人払いをされた息吹が居る部屋に入ると、袖で顔を隠して…泣いていた。
ここへ来る度にいやな思いをして、意識してもない男に言い寄られて、触られて…
道長が必死に慰めようとしていたが顔は上がらず、この部屋へ入ったと同時に涙が止まらなくなってしまったのだ。
「息吹、帰ろうか」
「…父様…十六夜さんは、平気?」
…つらいことがあったというのに心配してくれる息吹がいじらしく、息吹から貰った鈴を耳元で鳴らした。
ちりん。
…『是』の合図だ。
それで笑顔が戻って顔を上げてくれたので、晴明が息吹を立ち上がらせると道長に言った。
「そなたは帝のお守りをして来い。私はもしかしたら謹慎になるやもしれぬが、まあのんびりとさせてもらう」
「お守りか…また荒れるな…」
晴明が息吹の頭を撫でてやりながら御所を後にする。
主さまはそっと息吹から離れて幽玄町へ向かった。
「息吹姫を明日も参内させるように。私の魅力に気づかせてみせる」
「…御意。では、これにて」
部屋を出た途端…晴明はとうとう込み上げる笑いを堪えきれずに、肩を揺らしながら手で口元を覆って涙目になっていた。
「若造め、お前の魅力はその地位だけだとまだ気付かぬのか」
「晴明…何故止めた?俺はあいつに名を呼ばれたんだぞ」
姿を消したまま主さまが後ろからついて来ていて、晴明は当たり前のように言ってのけた。
「百鬼夜行を見たいからに決まっているではないか。私も駆り出されるだろうが、結界を強めるふりをして穴をいくつか開けておいてやる。そこからなだれ込め」
…本当に性格が悪い。
幼くして妖狐の母を一条朝から討たれ、目が開いたばかりの晴明に目をかけて育ててやった晴明は妖力が強く、人の生活は無理だと考えていたが…
今やこうして人から重宝され、溶け込んだふりをしながら一条朝の崩壊を目論んでいるのだ。
絶対に敵には回したくはない。
「息吹、大丈夫か?」
人払いをされた息吹が居る部屋に入ると、袖で顔を隠して…泣いていた。
ここへ来る度にいやな思いをして、意識してもない男に言い寄られて、触られて…
道長が必死に慰めようとしていたが顔は上がらず、この部屋へ入ったと同時に涙が止まらなくなってしまったのだ。
「息吹、帰ろうか」
「…父様…十六夜さんは、平気?」
…つらいことがあったというのに心配してくれる息吹がいじらしく、息吹から貰った鈴を耳元で鳴らした。
ちりん。
…『是』の合図だ。
それで笑顔が戻って顔を上げてくれたので、晴明が息吹を立ち上がらせると道長に言った。
「そなたは帝のお守りをして来い。私はもしかしたら謹慎になるやもしれぬが、まあのんびりとさせてもらう」
「お守りか…また荒れるな…」
晴明が息吹の頭を撫でてやりながら御所を後にする。
主さまはそっと息吹から離れて幽玄町へ向かった。