主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
その後道長はしばらく晴明の屋敷に滞在していたが残務があるといって再び御所に戻り、息吹も早々に寝てしまって晴明も仮眠を取っていたのだが…
ぱしっ
――何かが破れたような感触に瞳がすっと開き、意地悪い笑みを浮かべた。
「始まったか。では間もなくだな」
戸板を開けて庭に出ると空を見上げ、そこに長い行列が浮かんでいるのが見えて小さな声で笑った。
「ふふふ、今頃あの若造も焦っているだろう。よもや怒らせた妖の正体が百鬼夜行の王だったとは思いも寄るまい」
「…父様…どうしたの?まだ起きて……」
――もう寝たと思っていた息吹が目を擦りながら現れて、まさに絶好の好機の到来に晴明は息吹を手招きすると空を指した。
「見てごらん」
「…!こ、れは…百鬼夜行…!」
「そうだよ。主さまが百鬼夜行を率いている。あの方角は御所の方だね」
息吹は…目を奪われていた。
この光景は6年前ならば見慣れていたもので、毎夜主さまに“行ってらっしゃい”と声をかけて送り出したものだ。
空高くに連なっている行列は、地上からはどんな妖が列をなしているのか目視することはできない。
あの中に…母様や…雪男や…主さまが?
「……」
「…息吹…」
晴明が息吹の肩に手を乗せると扉の外で馬の嘶きがして、武装した道長が飛び込んできた。
「晴明、大変だ!物の怪たちが!」
「ああ、私の出番というわけだな。あれは幽玄町の主さまだ。下手に手を出すと末代まで祟られるぞ」
「ち、父様…!」
「そなたはここに居なさい。結界を張っておくから百鬼夜行はここには入ってこれないから安心しなさい。では行って来るよ」
――内心舌を出しながら息吹を置いて晴明が出て行き、残された息吹は…
6年ぶりに百鬼夜行を見て、“会いたい”という想いが噴き出して浴衣姿のまま…裸足のまま外へ飛び出して、立ち止まった。
「え…、牛車?」
それは晴明がこうなると予想して用意していたもので、息吹がそれに乗り込むと走りだし、御簾を上げてひたすら百鬼夜行を見上げた。
「主さま…みんな…!!」
叫ぶ。
ぱしっ
――何かが破れたような感触に瞳がすっと開き、意地悪い笑みを浮かべた。
「始まったか。では間もなくだな」
戸板を開けて庭に出ると空を見上げ、そこに長い行列が浮かんでいるのが見えて小さな声で笑った。
「ふふふ、今頃あの若造も焦っているだろう。よもや怒らせた妖の正体が百鬼夜行の王だったとは思いも寄るまい」
「…父様…どうしたの?まだ起きて……」
――もう寝たと思っていた息吹が目を擦りながら現れて、まさに絶好の好機の到来に晴明は息吹を手招きすると空を指した。
「見てごらん」
「…!こ、れは…百鬼夜行…!」
「そうだよ。主さまが百鬼夜行を率いている。あの方角は御所の方だね」
息吹は…目を奪われていた。
この光景は6年前ならば見慣れていたもので、毎夜主さまに“行ってらっしゃい”と声をかけて送り出したものだ。
空高くに連なっている行列は、地上からはどんな妖が列をなしているのか目視することはできない。
あの中に…母様や…雪男や…主さまが?
「……」
「…息吹…」
晴明が息吹の肩に手を乗せると扉の外で馬の嘶きがして、武装した道長が飛び込んできた。
「晴明、大変だ!物の怪たちが!」
「ああ、私の出番というわけだな。あれは幽玄町の主さまだ。下手に手を出すと末代まで祟られるぞ」
「ち、父様…!」
「そなたはここに居なさい。結界を張っておくから百鬼夜行はここには入ってこれないから安心しなさい。では行って来るよ」
――内心舌を出しながら息吹を置いて晴明が出て行き、残された息吹は…
6年ぶりに百鬼夜行を見て、“会いたい”という想いが噴き出して浴衣姿のまま…裸足のまま外へ飛び出して、立ち止まった。
「え…、牛車?」
それは晴明がこうなると予想して用意していたもので、息吹がそれに乗り込むと走りだし、御簾を上げてひたすら百鬼夜行を見上げた。
「主さま…みんな…!!」
叫ぶ。