愛しい人へ
好きな人?
それはお父さんじゃないの?
お母さんの好きな人はお父さんで。
お父さんの好きな人はお母さんで。
だから結婚したんじゃないの?
「好きな人・・・?」
お母さんを直視できないまま話だけを進めていく。
「うん。同じ会社の人なの。辛い時いつもその人が支えてくれていたわ。」
涙ぐんでいるはずのお母さんの目には溢れんばかりの涙。
目にハンカチを当てながら話を進める。
「お父さんはなんて?」
これからお父さんは1人になったゃうの?
「お父さんは承諾したわ。」
辛かったね。お父さん。
時々食べに行くお寿司も。
時々撮る家族写真も。
本当に時々だったけど。
もう出来なくなるの?