絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

更にゆかいな仲間たち

 7月第2火曜日は猛烈に忙しい日だった。それにも関わらず、久しぶりというか多分初めてだろう。仲良しが揃って昼休みの食事ができたのである。
「秋ダメだったってことはもうダメだね」
 コンビニスパゲティの玉越はプラスチックのフォークを回しながら呟く。
「宮下店長にさりげなく聞いたら、あぁ……ってそれだけで済まされましたよ」
 カップラーメンの西野は、弁当屋のランチ弁当の香月を見ながら聞いた。
「何て聞いたの?」
「やっぱり申請休みを皆でとるって無理ですかねえ、ってさりげなく」
 月シフトは店長が基本、三か月分まとめて先に作ることになっている。多少のずれは後で発生するが、こういう遊びの時こそ、三か月くらい前から仕込んでおかなければいけないと思って申請したのに、それでもその気持ちを汲んではくれなかったのだ。
「ってことは……」
 西野はカップラーメンを勢いよくすする。
「全店休日」
 ランチョンマットの上に自家製のランチを広げ、静かに口にしていた日本人形のような永作が小さな声で発する。
「それいつの話よぉ」
 玉越が嘆いた。
「2月?」
 香月は去年を思い出す。
「半年も先……でも、9月でも個々にだったら取れてたよね? 西野、シフト見て来て」
 玉越は下々を扱うように命令する。
「俺ラーメン」
「はいはい」
 香月はすぐに立ち上がって部屋の隅までシフト表を見に行く。
「私と吉原さんが明日一緒で、後は当日皆一緒だよ」
「このメンバーでどっか行ってもねぇ」
 玉越の半笑いに西野も攻撃する。
「だよねー」
「というか、何の申請?」
 ここまできてそれを言わせるかと、まず玉越が飲みかけていた野菜ジュースを噴出した。
「どわー!!!!」
「……」
 玉越は必死に口を押さえながらティッシュを探す。
「はい」
 永作のポケットから出てきた使うのが惜しいほどの綺麗なティシュを、玉越は頷きながら口に当てた。
「今俺のラーメン中入ったー!!」
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