絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
 さすがの西野も怒り狂う。
「ごめんごめん」
 笑って済ませる玉越。
「明日ラーメン奢るから♪」
「当たり前だ」
 と言いながら何も気にせず続きをそのまま食べている。
「ってか、あんた申請したんでしょ?」
「何も」
 自家製の普通の弁当を食べながら、吉原は短く喋る。
「皆で申請出してカラオケ行こうって……あれー。そのコウと休みの日って申請じゃないの?」
「いや、赤マーク入ってたから申請だよ?」
「あ、俺が勝手に2人分出した」
「早く言え」
 玉越は西野を睨む。
「カラオケかぁ」
「吉原、普段カラオケとか行くの?」
 この吉原の次の返答は読めなかったが、ラーメンとランチを持った西野と香月はさっと椅子ごと身を引く。
「家にある」
「ブッ」
 再び出たが、空気だけ。
「家でカラオケすんの!?」
 一番仲が良いであろう西野ですら大きく反応した。
「家、飲み屋だから」
「へー!? そこですんの? 一人で?」
 玉越は次々質問する。
「いや、誰も一人でとは言ってないじゃん」
 すばやく突っ込む西野。
「たまに接客を手伝わされることがある」
「えー? 飲み屋ってどんなの?」
「スナック」
「へー」
 西野も知らなかったのか、かなり驚いている。
「たまにカウンターで酒造る時がある」
「そっちの方が似合うよねー」
 玉越は普通に頷いたが、
「若干失礼だな」
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