絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
 一同口をそろえて頭をひねる。
「……西野、あんたちゃんと調べてきなさいよ」
「……了解……」
 西野は割り箸を銜えてまだ考えている。
「こぅらお前ら」
 たった今休憩に入ったばかりの矢伊豆副店長は、弁当屋の弁当とペットボトルのお茶片手に永作の隣にどかりと腰掛けた。
「いつまで休憩なんだ?」
 言い終わるより先に、玉越、西野がさっと出て行く。
「時計読めない奴が時々いるからな」
 続いて香月、吉原も片付けをして後に続く。
「すみません、話し込んでしまって……」
 永作は矢伊豆に一人謝った。
「永作が悪いわけじゃないだろ?」
「時間過ぎていたの、分かっていたけど止めませんでした」
「あそう」
 だが矢伊豆はそんなことどうでもよさそうに、弁当を広げ始め、少し時間を過ぎた永作のことは咎めもせず、ただ2人は静かに、少しだけ言葉を交わした。

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