絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 

芸能人のいつもの誕生日

「ねえねえ」
「んー?」
 ユーリは家でいるときはたいてい何かしらアルコールを飲んでいる。酒に興味のない香月はそれが何なのか、言われても忘れていることがほとんどで、そのアルコールの隣でジュースか牛乳を飲んでいることがほとんどだった。
 本日もリビングでテレビを見ながら2人、ソファでそれぞれ寛ぐ。この、何ともいえない無駄な時間が、今の香月にとって、一番安らげる時間なのかもしれなかった。
「寝た?」
 ソファで横になるユーリに話しかける。
「起きとるやん(笑)」
「あのさあ、……あ!!!」
「なにー?」
「そーだ私、レイジさんに誕生日プレゼント渡してない! どうしよ、もう10日くらい過ぎてる!!!」
「気づいてないんちゃう?」
「えー?(笑)」
 さすがにそんなことないだろうと笑う。
「だってすごい量やし」
「トラック一車分?」
「くらいはある」
「うそぉ?」
「ほんま、ほんま。黙って、『お酒あげたやん』って言うてもバレへん(笑)」
「いやそれがあ、なんかしますって言っちゃったんですよねえー……」
「なんかって?」
「食事……とか?」
「そらあかんな」
「バレバレでしょー?」
「うん」
「次いつ帰ってくるかなー。私、最近全然見てない」
「え? 最近そこそこ帰ってきてんで?」
「え、嘘!? 私会ってないよ?」
「まあ、深夜とかやけど」
「あぁ……」
「電話したらええやん」
「えー……そこまでしてかけなくても」
「だって誕生日プレゼントなんやろ?」
「まあ……なんか物にしておけばよかったなぁ。ほんと、お酒とかならその辺置いておけばいいし」
 だとしても高価な物は買えないし、安い酒なんか飲めないって言いそうだし。マフラーとか適当な物が使えたらなあと、学生時代の季節外れの思い出を振り返る。
「愛ちゃんと一緒に食事したいんよ」
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