絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
「え……あ……」
 彼はすっと顔を下ろすとそのまま唇に触れようとしてくる。
「え、ちょっ……まッ!!」
 さすがにそこまで言われてはと、必死で俯いて抵抗をした。
「あ、拒否するんだ」
 と何故か笑う。
「しますよ! だって……」
「でも、多分、愛ちゃんも僕のことを嫌いじゃないんじゃないかなって……どう?」
 どういう風に話を進めていこうか、迷う。
「……私……」
「何?」
 彼は優しく微笑む。
「そんな……私は……。レイジさんは誰とでもルームシェアとかできる、そういう……」
「そうじゃないよ」
「芸能人ってそういう感じだと……」
「ユーリはしないよ」
 あれは芸能人には入っていないような気がする。
「……だけど、そういう人だと思ってて……」
「遊び程度にしか考えてなかった?」
「そんなことはないけど。お金払ってもらってるし……。けど、好きかどうかって聞かれたら……」
「付き合って、考えていこう」
「……」
「今もし、考えている間に誰かに取られるのは嫌だから」
「付き……合う、って……」
「お互いを好きになっていくんだよ」
 レイジは優しくではあるが、無断で頬にキスをする。
「中で、落ち着いて話をしようか」
「……」
 体が自然に硬直する。
「そんなんじゃないよ(笑)」
 彼は笑う。
「抱きたいとか、そんなんじゃない。僕は君に僕のことを好きになってもらいたいから」
「……」
「歩ける?」
「え、あ、はい」
「いいよ。歩かなくて」
 どういう意味かと思ったら、さっと肩に腕を回して力を込め、お姫様抱っこの状態にされてしまう。
「お姫様」
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