絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
 そしてまた頬にキスを落としてくる。
「中で話しをしよう……朝まででも」
 わりと頭の中は冷静だった。それはもう自分の中で答えが出ていたからかもしれない。
 船内に入るとすぐにドアがあり、その短い廊下の突き当たりのドアを開けると、これみよがしにまた、ドーンと大きなダブルベッドが置かれていた。
「……初めてだね」
「え?」
 そのベッドに腰掛けさせてくれる。
「同じベッド」
 って、今寝ないって言ったとこじゃん!!
 香月は姿勢を正して座った。
「私、レイジさんはもっと大人な女の人が好みかと思っていました」
「あぁ。一応そういう意識はしてくれてたんだ(笑)」
 というか多分、好きでもそうじゃなくても大半の女性はそういう考えでもって動いている気がする。
「まあ、嫌いじゃないけどね」 
 ついでに聞いておこう。
「前の彼女の優さんもそういえば、そんな大人って感じじゃなかったですね」
「それは……タブー」
 唇にキス。
 油断した。
 また、抱きしめられると思ったら、強い力で引っ張られ、ベッドの上に倒される。
「ちょっ!!」
 起き上がろうにも、姿勢がなかなか整わない。
「抱かれたくなったら言って。それまでは何もしない」
「当然です!」
 さすがに口に出た。
 一人起き上がり、座る香月に、レイジは笑う。
「というか、あの、キスもしたくなったら私からしますので、勝手にしないで下さい」
「嫌だった?」
「そりゃ……私だって心の準備ってものがあります」
「無防備なのも好きだよ」
 芸能人ってなんでこうなんだ?
「そうじゃなくて……。あの、私の気持ち、考えてます?」
「うん、好きになってもらおうと考えてる」
「だったら、私の話を聞いてください。キスは私からします。だからしないで下さい!」
「……絶対?」
 何の絶対だ? と思うが、まあなんでもいいかと、
「絶対です!」
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