絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
「いや、内容の違いだよ。付き合っているから彼女というわけではない。その場合、愛人でも、恋人でもいいわけだし」
「あぁ、なるほど」
「分かる?(笑)。彼女という立場にいる権利があるということ……くらいかな」
「……難しいですねぇ」
 独特の言い回しに、首を傾げてしまう。
「まあ要するに、今僕が一番側においておきたい人ということだよ」
 要しすぎだなぁ。
「……正直に言っていいですか?」
「うん。何でも」
 レイジは顔をこちらに向けて、まっすぐな視線を送る。
「私、レイジさんのこと、怖い人だと思ってる」
「どういうところが?」
「逆らえない感じ……」
「よく言うよ。充分逆らってるじゃん(笑)。好きで付き合おうって言ってんのに(笑)」
 レイジは眉間に皺を寄せて、笑う。
「そうだけど……それは今初めて言えたことで……」
「そう? 別に嫌なことがあったら言っていいよ」
「……そうですよね……」
「うん、他にない?」
「他……」
「何かある? なんでもいいよ……。そうだなあ。前の彼女も知ってるから(笑)、心配もないだろうしね。あと、今度、僕がどんな仕事をしてるのか見においで」
「……雑誌の撮影ですか?」
「それもあるけど、色々あるよ。ライブが一番いいかな。見たことある?」
「生ではないです」
「じゃあそうしよう」
 勝手に決定されていくが、
「……私、レイジさんと付き合うってピンとこないです」
「別にピンとくる必要ないと思うけど」
「なんか……なんか、異国の人って感じで。テレビで見ていた時間の方が長いからかな……」
「じゃあ、ユーリはどうだった? 今も異国?」
「いえ、ユーリさんは……普通のお兄さん、お客さん……。というかユーリさんは最初から芸能人じゃないですし。私の中では」
「芸能人だよ。テレビ出てるじゃん。先週のMステージも出てるよ」
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