絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
「もし、仮に。レイジさんのことをものすごく愛してしまって」
「うん」
「捨てられたら、私はどうすればいい?」
「僕は捨てたりはしない。確かにいつか愛は終わるかもしれない。この前の愛が終の恋愛がわったように、いつかはやっぱり終わるかもしれない。だけど、僕は愛ちゃんを捨てたりはしない。こんなに熱心に口説いてるんだよ(笑)。捨てるはずがない」
「私からいえば、何の根拠もないことです」
「根拠は、ただ好きかそうじゃないか、それだけのことだよ」
「好きか、どうか……」
 考えて、しまう。
「僕のこと、好きになれそう?」
「確かに、嫌いじゃないとは思う。けど。なんか、……。色々、自信もないし……」
「いいよ、僕のことを嫌いでさえなければ、どうにでもなる」
 今度は無言で誘いかけてくる。
 今回ばかりは諦めてその誘いに乗り、彼の腕に頭を乗せた。
「好きになるのが嫌だ……」
 目を閉じながら呟く。
「安心して。愛ちゃんはもう、僕のことを好きだよ……」

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