絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
 レイジがこちらを見ているのが分かる。だけど、少し視線をずらしてはっきりと言った。
「そのうち、諦めてください」
 それだけ言って立ち上がった。が、強く手を捉まれ足を出す機会を逃してしまう。
「諦められない」
「私は他の人みたいに、綺麗じゃない。可愛くもないし」
「そんなことはない。だからそれは僕が……」
「世の中に女の人はいくらだっています」
 目を見てしっかり言った。
「だから?」
 相手もきちんと返してくれる。
「私じゃなくてもいいはずです」
「どうすれば分かってもらえるかな……」
 言いながらレイジも立ち上がった。さすがに20㎝も身長差があって上から見下されると、いつにも増して威圧感がする。
「無理矢理したら……」
 低い声で、どんどん迫ってくる。部屋は狭く、すぐにドアに背中がついた。
「分かるかな……」
 まず両手が耳元近くにゆっくりとついて、どんどん顔が近寄ってくる。
「す、する……って……」
 見たことがないような険しい目つきと視線が合って、驚いて顔を背けた。
「ちょちょ、怖がってるってー」
 ユーリが後ろから呆れ声で制した。
「愛ちゃん、今はまだ好きかどうか分からへんって言うてるやん。軽く付き合おうともせず、ええ感じやと思うけどなあ、逆に」
 それはナイスフォローなのかどうなのか、ユー!!
「そんなモタモタしてたら虫がつく」
「つきませんって!!」
 必死で抵抗した。
「つきませんって!! レイジさんくらいですってば(笑)」
 思いつきで言ったものの可笑しくて笑ってしまった。
 ユーリも笑っている。
「そそ、レイくらいよ(笑)」
「ユキトも危なかった」
「あの人は誰でもええタイプやん」
 酷い言われようだな(笑)。
「じゃあ、もし、次に私が誰かを好きになるとしたら、それはレイジさんかもしれません」
「そんなの全然納得いかない」
 だって他に言いようがないし……。
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