絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
 ここで、初めてのトイレに立つ。飲み始めるとトイレに立ちたくなるのは、肝臓が思わしく動いている証拠でもある。
「さあって。どうしよう。もう1回これ注いでくれませんか?」
「いらへんのちゃうのー?」
 言いながら、既に瓶は傾いている。
「一気してみよう」
 湯呑の中はほんの1センチくらいしか、液体が入っていない。
「別にせんでも(笑)」
「せーのっ」
「おおー、ええ飲みっぷりや!」
「……ぷはー、まずいー」
「もいっぱーい!!」
 ユーリは何の許可もなく、また同じ物を注ぐ。
「えー、も1回?」
「も1回やる気かいな!?」
「せーの……」
「そんな何回もせんでも……うわー、飲んだ」
「……」
「半分残ってるやん(笑)」
「……まずいー」
「はい、もいっぱーい!!」
「ち、ちょっ……!!」
「嘘やがな(笑)」
 ユーリはそれは楽しそうに笑った。
「でも酔えた気がしないね、あんまり。なんか違う物飲もう」
「他ぁ?」
 それから、ユーリの自室から取ってきた焼酎を3種類チャンポンで飲んだ。けど量にすればそれほどでもなかったはず。
 なのに、3度目のトイレに席を立とうと思った時、ようやく視線が定まらないことに気づいた。
「……んー……」
「え、どうしたん(笑)」
「んー……」
「えー?」
 ユーリが自分から寄ってきたせいだ。その肩が目に付いたせいで、そこをつかんで立ち上がろうとした。
「あえっ!?」って、
「うわっ!!」って、
「ちょっ……」って、立ち上がろうとしても足がうまく地につかなくて転倒。しかも、ユーリの上に思いっきり。
「酔い(笑)す……」
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