絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ
「はい……何も聞かれてはおりませんか?」
それでも笑顔は崩さないのは、さすがだ。
「ちょっと……」
「そうですか……とりあえず、こちらがキーです」
既に白い布地に黒の和風なロゴが入ったキーケースに入れられたキーには、確かに高級車の証BMWのロゴが入っている。
営業マンは丁寧にキーを香月の掌に置いた。香月の内情など、自身には何も関係がない。
「では、使い方の説明など……」
「いえ、あの。そのセイリュウさんの電話番号とか聞いていますか?」
「はい、ございます」
「教えてください」
「はぁ……。ちょっと失礼します」
営業マンは、黒いバックを足元に置き、その中から一冊のファイルを出して探し始めた。
「……こちら……ですね。こちらの携帯番号で連絡を取らさせていただいております。相手の方は代理人のタオ様です」
「タオ……」
全く知らない名前も出てきて、更に困惑する。先に阿佐子に何かしら確認をとってもらった方がいいのかどうか、それも視野に入れて考える。
「……失礼ですが、本日香月様に納品するということは間違っておりませんよね?」
営業マンは目は笑いながらも、ようやく不安そうに尋ねた。
「あ、はい。それは、まあ……。あの、すみませんが、とりあえずこの番号だけ控えさせてください。で……あの、詳しいお話しは後日します。だから、今日のところはこれでもう構いませんから……」
「はあ……それはこちらとしましては、お受け取りのサインだけ頂ければ構いませんが……」
「あっ、はい。あの、ところで、金額の方は、お金の方はどうなってますか?」
「既に全額現金で一括払いして頂いております」
彼は自信満々に応えた。おそらく、今月の実績はよく伸びただろうと余計なことを考えてしまう。
「そう、ですか……」
香月は自分の携帯を取り出すとさっと登録する。
「では、またご連絡ください。私高井と申します」
また一段と低い腰で何度かお辞儀をし、彼はやがて玄関から姿を消した。
香月はすぐにその番号に発信する。ソファで新聞を読んでいるレイジが目に入り、なんとなくベランダに逃げた。
「あのっ、もしもし……」
5回目のコールで出たタオは中国人だろうか?
そう思いながらも、日本語以外喋れないので仕方ない。
『もしもし……』
それでも笑顔は崩さないのは、さすがだ。
「ちょっと……」
「そうですか……とりあえず、こちらがキーです」
既に白い布地に黒の和風なロゴが入ったキーケースに入れられたキーには、確かに高級車の証BMWのロゴが入っている。
営業マンは丁寧にキーを香月の掌に置いた。香月の内情など、自身には何も関係がない。
「では、使い方の説明など……」
「いえ、あの。そのセイリュウさんの電話番号とか聞いていますか?」
「はい、ございます」
「教えてください」
「はぁ……。ちょっと失礼します」
営業マンは、黒いバックを足元に置き、その中から一冊のファイルを出して探し始めた。
「……こちら……ですね。こちらの携帯番号で連絡を取らさせていただいております。相手の方は代理人のタオ様です」
「タオ……」
全く知らない名前も出てきて、更に困惑する。先に阿佐子に何かしら確認をとってもらった方がいいのかどうか、それも視野に入れて考える。
「……失礼ですが、本日香月様に納品するということは間違っておりませんよね?」
営業マンは目は笑いながらも、ようやく不安そうに尋ねた。
「あ、はい。それは、まあ……。あの、すみませんが、とりあえずこの番号だけ控えさせてください。で……あの、詳しいお話しは後日します。だから、今日のところはこれでもう構いませんから……」
「はあ……それはこちらとしましては、お受け取りのサインだけ頂ければ構いませんが……」
「あっ、はい。あの、ところで、金額の方は、お金の方はどうなってますか?」
「既に全額現金で一括払いして頂いております」
彼は自信満々に応えた。おそらく、今月の実績はよく伸びただろうと余計なことを考えてしまう。
「そう、ですか……」
香月は自分の携帯を取り出すとさっと登録する。
「では、またご連絡ください。私高井と申します」
また一段と低い腰で何度かお辞儀をし、彼はやがて玄関から姿を消した。
香月はすぐにその番号に発信する。ソファで新聞を読んでいるレイジが目に入り、なんとなくベランダに逃げた。
「あのっ、もしもし……」
5回目のコールで出たタオは中国人だろうか?
そう思いながらも、日本語以外喋れないので仕方ない。
『もしもし……』