絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ
そんなまさか、店の駐車場で笑顔で別れた火曜日、車でマンションのエントランスに帰って、マンションに入って……いや、入らなかった。ということは、車がどこかにある。
思いなおしてすぐ警察に
「白のBMに乗っていたんですが、見つかっていませんか!?」
と勢いで尋ねたが、
「今調べている最中です」
冷たい返事だった。頭を冷やすには丁度いいくらいの。そういえばあの車だって貰い物だと言っていたから、もし見つかっても、名義が違えば全くたどり着かない。ナンバープレートから、マンションの駐車場の登録用紙と照合はできても……あぁそうか、こちらからナンバーを教えればスムーズにいくのか。
考えて、もう一度連絡する。警官は、「はい」と言っただけだった。
溜息は深い。そこにノートパソコンと未読の通達メールがある。だが、何も手にとる気はしなかった。
犯人は、一見おっとりしているだが、香月が思い通りにならなかったら切れる……そんなタイプのような人間の気がして頭から離れなくなっていた。
香月は、なんらかの方法で連れ去られた。薬か何かで気を失わされたのかもしれない。そして、犯人の家へ。多分マンションだろう。そこは、一見通常のワンルーム。だけれども、恐怖を感じた香月は泣き喚き、血まみれに……。
やめよう。考えても仕方がない。
探すアテもない。警察には届けた。あとは、連絡を待つのみ……。
あれからレイジから何の連絡もない。彼もそれなりに考えたが、何も思い浮かばなかったか、それだけの存在だったということだろう。
腕のオメガは早くも12時を指していた。それでもまだ半日ある。とりあえず、メールを読んで、今日からのシフトを香月なしで組み直さなければいけない。
どうにか頭を回転させながら仕事をした。そして、しばらくしてからフロアに立つ。普段はフロアに立つと時間があっという間に流れてしまうので、極力避けているが、今日ばかりは全てを忘れてしまいたかった。
「香月は?」
レジカウンターの中で、背後から忘れかけていた名前を突然出されたので、心臓がドキリと鳴った。
矢伊豆である。休日にもかかわらず、出勤してきたのだ。
「あ……ああ……ちょっと」
不審がる矢伊豆を連れてレジから離れ、店長室にまで戻り、そこでまたドアを閉めた。
矢伊豆も表情が険しくなっている。
「実は、香月から……月曜日、相談を受けた」
どこまで話そうか考えながら喋る。
「ストーカーに拉致されそうになったと。で、昨日から欠勤してるのを調べてみたら火曜から家に帰っていないそうだ。火曜、俺が最後に店で別れてから、行方が分からない」
「……もう4日も?」
「警察と本社には連絡した。だが……本人がもう成人してるからな。警察も、全力で調べるわけではなさそうだった」
「……何も分からない状態ですか……」
思いなおしてすぐ警察に
「白のBMに乗っていたんですが、見つかっていませんか!?」
と勢いで尋ねたが、
「今調べている最中です」
冷たい返事だった。頭を冷やすには丁度いいくらいの。そういえばあの車だって貰い物だと言っていたから、もし見つかっても、名義が違えば全くたどり着かない。ナンバープレートから、マンションの駐車場の登録用紙と照合はできても……あぁそうか、こちらからナンバーを教えればスムーズにいくのか。
考えて、もう一度連絡する。警官は、「はい」と言っただけだった。
溜息は深い。そこにノートパソコンと未読の通達メールがある。だが、何も手にとる気はしなかった。
犯人は、一見おっとりしているだが、香月が思い通りにならなかったら切れる……そんなタイプのような人間の気がして頭から離れなくなっていた。
香月は、なんらかの方法で連れ去られた。薬か何かで気を失わされたのかもしれない。そして、犯人の家へ。多分マンションだろう。そこは、一見通常のワンルーム。だけれども、恐怖を感じた香月は泣き喚き、血まみれに……。
やめよう。考えても仕方がない。
探すアテもない。警察には届けた。あとは、連絡を待つのみ……。
あれからレイジから何の連絡もない。彼もそれなりに考えたが、何も思い浮かばなかったか、それだけの存在だったということだろう。
腕のオメガは早くも12時を指していた。それでもまだ半日ある。とりあえず、メールを読んで、今日からのシフトを香月なしで組み直さなければいけない。
どうにか頭を回転させながら仕事をした。そして、しばらくしてからフロアに立つ。普段はフロアに立つと時間があっという間に流れてしまうので、極力避けているが、今日ばかりは全てを忘れてしまいたかった。
「香月は?」
レジカウンターの中で、背後から忘れかけていた名前を突然出されたので、心臓がドキリと鳴った。
矢伊豆である。休日にもかかわらず、出勤してきたのだ。
「あ……ああ……ちょっと」
不審がる矢伊豆を連れてレジから離れ、店長室にまで戻り、そこでまたドアを閉めた。
矢伊豆も表情が険しくなっている。
「実は、香月から……月曜日、相談を受けた」
どこまで話そうか考えながら喋る。
「ストーカーに拉致されそうになったと。で、昨日から欠勤してるのを調べてみたら火曜から家に帰っていないそうだ。火曜、俺が最後に店で別れてから、行方が分からない」
「……もう4日も?」
「警察と本社には連絡した。だが……本人がもう成人してるからな。警察も、全力で調べるわけではなさそうだった」
「……何も分からない状態ですか……」