絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ
「ミス多いしね。意味のない上目遣い、あれいらないなー」
「そりゃ、玉越さんの方がでかいから……」
「玉越さんの方が何がでかい?」
違う声に全員がそちらに顔を向けた。
「……特に、何も」
玉越は少ししゅんとし、ペットボトルのお茶を一口飲む。
突然西野の隣に座ったのは松岡副店長だった。中華弁当はとても美味しそうで、全員の目が一度そちらに集中する。
「西野、この前の300万の一式、あのお客さんが昨日来ててな、来週くらいまた来るって」
「聞きました。冷蔵庫の件ですね」
「上客だな」
「へへ(笑)」
西野は得意気に笑う。
「小野寺はどうかな?」
聞いてか聞かずか、松岡は玉越に尋ねる。
「あー。まあ、あんなもんといえばあんなもんですが。少しミスが多い気がします。とにかく、今は基本以外触らせることはできませんね。この先も頑張り次第ですが、今は、なんとも」
「うーん。そうか……。香月も分からないところは教えてやってくれよ」
「あ、はい……」
突然振られた香月は、慌てて返事だけする。
「どんなミスが多い? この前の上げ換え件は驚いたが……」
「なんスか?」
西野はきょとんとした顔で松岡を見た。
「あれ、西野知らなかったの?」
「うん」
「勝手に100万の伝票を上げ換えて大混乱になったのよ。なんか本人は全然違うことをしようとしたらしいんだけどさ。綺麗に全部返品になってたわけ。そんで商品の発注が遅れて、その夜大変だったのよー」
「らしいな。俺も休みだったから聞いた話だけど」
「宮下店長ったら久しぶりに怖い顔してさ」
玉越は目を大きく見開いた。
「処分の分だったからな、そりゃ焦る」
「怖い顔って?」
西野はラーメンをすすりながら尋ねる。
「いつもはあれでも優しい顔ですよね」
「そうだなぁ。最近は特に丸くなった気がする。一時は本当に切れモノだったよ。何を聞いても100%抜かりない答えが返ってくるし、来る者を寄せ付けない雰囲気があった。その時は、今ほどあんまり従業員とも接してなかった気がするな……カリスマ的な存在だった」
「そうなんですか……」
何故か香月が一番に頷いた。
「この前家行ったんすよ」
「……何しに?」
松岡は一度箸を止めた。
「すごいでしょうこの人達。お見舞いって、家に上がりこんで、ゲームしたらしいですよ」
「うわっはははは」
「そりゃ、玉越さんの方がでかいから……」
「玉越さんの方が何がでかい?」
違う声に全員がそちらに顔を向けた。
「……特に、何も」
玉越は少ししゅんとし、ペットボトルのお茶を一口飲む。
突然西野の隣に座ったのは松岡副店長だった。中華弁当はとても美味しそうで、全員の目が一度そちらに集中する。
「西野、この前の300万の一式、あのお客さんが昨日来ててな、来週くらいまた来るって」
「聞きました。冷蔵庫の件ですね」
「上客だな」
「へへ(笑)」
西野は得意気に笑う。
「小野寺はどうかな?」
聞いてか聞かずか、松岡は玉越に尋ねる。
「あー。まあ、あんなもんといえばあんなもんですが。少しミスが多い気がします。とにかく、今は基本以外触らせることはできませんね。この先も頑張り次第ですが、今は、なんとも」
「うーん。そうか……。香月も分からないところは教えてやってくれよ」
「あ、はい……」
突然振られた香月は、慌てて返事だけする。
「どんなミスが多い? この前の上げ換え件は驚いたが……」
「なんスか?」
西野はきょとんとした顔で松岡を見た。
「あれ、西野知らなかったの?」
「うん」
「勝手に100万の伝票を上げ換えて大混乱になったのよ。なんか本人は全然違うことをしようとしたらしいんだけどさ。綺麗に全部返品になってたわけ。そんで商品の発注が遅れて、その夜大変だったのよー」
「らしいな。俺も休みだったから聞いた話だけど」
「宮下店長ったら久しぶりに怖い顔してさ」
玉越は目を大きく見開いた。
「処分の分だったからな、そりゃ焦る」
「怖い顔って?」
西野はラーメンをすすりながら尋ねる。
「いつもはあれでも優しい顔ですよね」
「そうだなぁ。最近は特に丸くなった気がする。一時は本当に切れモノだったよ。何を聞いても100%抜かりない答えが返ってくるし、来る者を寄せ付けない雰囲気があった。その時は、今ほどあんまり従業員とも接してなかった気がするな……カリスマ的な存在だった」
「そうなんですか……」
何故か香月が一番に頷いた。
「この前家行ったんすよ」
「……何しに?」
松岡は一度箸を止めた。
「すごいでしょうこの人達。お見舞いって、家に上がりこんで、ゲームしたらしいですよ」
「うわっはははは」