絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ
ゆかいな仲間たち
「来月皆で申請出そうかって話が出ててね」
「休み?」
「そう」
6月初旬の平日午後1時すぎ。ホームエレクトロニクスの広いスタッフルームでは数十人が昼食をとっていた。その一角に私たちはいる。
隣に座っている玉越よしえは29歳。理美容担当の強気で有名な美人だ。社長と何らかの縁があるらしく、本社の幹部とも仲が良いため、皆ちょっとした幹部扱いをしている。まあ、それだけ聞けば微妙な感じだが、持ち前の性格と仕事のデキで十分にカバーできているのが彼女という人間だ。
「皆でランチしてカラオケでもどうかなって。夜だともうクタクタじゃん?」
玉越は起用にも、食べながら喋っている。
「そうだねえ」
「じゃあいつにするー?」
「ってかあんた呼ぶともなんとも言ってないし」
目の前に座って、タイミングをずっと見計らっていた西野誠二はようやく話しかけてくる。
「俺がいないと盛り上がらないじゃん」
「あ、大丈夫、大丈夫。他にも呼ぶつもりだから」
玉越は、右手を振ったが、西野はすぐに「他、誰にする?」。
玉越は笑いながらこちらを見たので、香月も笑った。
「他……まず、吉原さんは呼ばないとね」
笑わせるつもりで香月は言った。
「ブッ…」
出た。
「きったねーーなー!」
西野は玉越の口から吹き出された野菜ジュースがテーブルに飛んだことに怒りを露にする。
とにかく玉越のツボは、特に目立ちもしない吉原だ、と言っても過言ではない。その吉原独特の言い回しに耐え切れず、とりあえず口に入れている物を噴き出す。多分もう条件反射の域に達していると思う。
「吉原さんいないのにー(笑) 」
「せめている所で吐いてくれ」
西野は素早くボックスティッシュから抜き取った数枚でテーブルを丁寧に拭きながらつぶやく。
「コウが吉原呼ぶなんていうからさー」
「いやだって……」
「まあ俺は呼んでもいいと思うけど?」
「だからテメ、いつ仲間に入ったんだよ」
見た目も明るい髪と赤い口紅の玉越は、喋りも堂に入っている。
「まあまあ(笑) 」
「休み?」
「そう」
6月初旬の平日午後1時すぎ。ホームエレクトロニクスの広いスタッフルームでは数十人が昼食をとっていた。その一角に私たちはいる。
隣に座っている玉越よしえは29歳。理美容担当の強気で有名な美人だ。社長と何らかの縁があるらしく、本社の幹部とも仲が良いため、皆ちょっとした幹部扱いをしている。まあ、それだけ聞けば微妙な感じだが、持ち前の性格と仕事のデキで十分にカバーできているのが彼女という人間だ。
「皆でランチしてカラオケでもどうかなって。夜だともうクタクタじゃん?」
玉越は起用にも、食べながら喋っている。
「そうだねえ」
「じゃあいつにするー?」
「ってかあんた呼ぶともなんとも言ってないし」
目の前に座って、タイミングをずっと見計らっていた西野誠二はようやく話しかけてくる。
「俺がいないと盛り上がらないじゃん」
「あ、大丈夫、大丈夫。他にも呼ぶつもりだから」
玉越は、右手を振ったが、西野はすぐに「他、誰にする?」。
玉越は笑いながらこちらを見たので、香月も笑った。
「他……まず、吉原さんは呼ばないとね」
笑わせるつもりで香月は言った。
「ブッ…」
出た。
「きったねーーなー!」
西野は玉越の口から吹き出された野菜ジュースがテーブルに飛んだことに怒りを露にする。
とにかく玉越のツボは、特に目立ちもしない吉原だ、と言っても過言ではない。その吉原独特の言い回しに耐え切れず、とりあえず口に入れている物を噴き出す。多分もう条件反射の域に達していると思う。
「吉原さんいないのにー(笑) 」
「せめている所で吐いてくれ」
西野は素早くボックスティッシュから抜き取った数枚でテーブルを丁寧に拭きながらつぶやく。
「コウが吉原呼ぶなんていうからさー」
「いやだって……」
「まあ俺は呼んでもいいと思うけど?」
「だからテメ、いつ仲間に入ったんだよ」
見た目も明るい髪と赤い口紅の玉越は、喋りも堂に入っている。
「まあまあ(笑) 」