絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ
蛻の殻……。あんな仕事にならない彼女を見たのが初めてな西野は、午後からの接客の合間に一体何の相談なのか、頭から離れなかった。
そしてようやく午後6時を回る。2人は仕事をうまく切り上げ、さっさと西野の愛車、シーマに乗り込んだ。
「どこ行く?」
天気は悪く、雨がぽつぽつと降り始めている。
「高藤さんって知ってる?」
突然の本題に西野は少し驚く。
「たかふじ? 何、メーカー?」
「ううん、倉庫。運送屋さんの」
「知らない」
「その人、ソニーの商品運んで来るんだけどね、愛想がよくてさ、時々お菓子もらったりしたり」
「あ、あれか、この前ムービー買ってた金髪の……」
「そうそう!」
「皆が褒めてたぜ、どっからでも客を引っ張ってくるって(笑)」
「子供の運動会にってそれを買ったの。子供がいたのよ、2人。男の子と女の子。まだ小さい。もちろん奥さんもいた。だけど、離婚したの。
他に好きな人ができたって、離婚したって」
西野はその先を素早く予想した。
「その人が……私だって」
遠くを見つめる。
「だけど私は何もそんな……付き合うとも、好きだとも、なんとも言ってないのよ?
特別……西野さんほど仲がいいわけでもない」
「2人で遊びに行ったりは?」
「昨日、断りきれなくて、初めて行った。昼間、携帯番号を教えてって言われて、断れなくて。じゃあ、迎えに行くからって。断れなくて……。そのまま食事に行った。そこで、離婚の話をされて、好きだからって、付き合ってくれって」
「うん」
「だけど私、そんな……そんなこと言われたって付き合えませんって言ったの。そしたら、離婚してるからもう大丈夫だ、とか……。それからその続きをちゃんと話そうってバーに行って……」
「何で飲みに行くんだよ!」
「だって、そんな……断れるほど仲よくないのよ!」
「で?」
「それで……朝起きたら、全然記憶なくて……」
「まさか、裸だった?」
「ううん。さすがにそんなんじゃないけど……」
西野の溜息は大きい。
そしてようやく午後6時を回る。2人は仕事をうまく切り上げ、さっさと西野の愛車、シーマに乗り込んだ。
「どこ行く?」
天気は悪く、雨がぽつぽつと降り始めている。
「高藤さんって知ってる?」
突然の本題に西野は少し驚く。
「たかふじ? 何、メーカー?」
「ううん、倉庫。運送屋さんの」
「知らない」
「その人、ソニーの商品運んで来るんだけどね、愛想がよくてさ、時々お菓子もらったりしたり」
「あ、あれか、この前ムービー買ってた金髪の……」
「そうそう!」
「皆が褒めてたぜ、どっからでも客を引っ張ってくるって(笑)」
「子供の運動会にってそれを買ったの。子供がいたのよ、2人。男の子と女の子。まだ小さい。もちろん奥さんもいた。だけど、離婚したの。
他に好きな人ができたって、離婚したって」
西野はその先を素早く予想した。
「その人が……私だって」
遠くを見つめる。
「だけど私は何もそんな……付き合うとも、好きだとも、なんとも言ってないのよ?
特別……西野さんほど仲がいいわけでもない」
「2人で遊びに行ったりは?」
「昨日、断りきれなくて、初めて行った。昼間、携帯番号を教えてって言われて、断れなくて。じゃあ、迎えに行くからって。断れなくて……。そのまま食事に行った。そこで、離婚の話をされて、好きだからって、付き合ってくれって」
「うん」
「だけど私、そんな……そんなこと言われたって付き合えませんって言ったの。そしたら、離婚してるからもう大丈夫だ、とか……。それからその続きをちゃんと話そうってバーに行って……」
「何で飲みに行くんだよ!」
「だって、そんな……断れるほど仲よくないのよ!」
「で?」
「それで……朝起きたら、全然記憶なくて……」
「まさか、裸だった?」
「ううん。さすがにそんなんじゃないけど……」
西野の溜息は大きい。