絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ
「だって、これから毎日顔合わせるんだよ……嫌だよそんなの……」
「しつこいのに苦労してるくらいだったら、そんな気遣うなよ」
「……そうかなぁ」
「そうだよ」
「……どうしよ」
香月は考えながら、荷物を持って廊下を歩き始める。
「そうか、やっぱり宮下に相談するか」
「やっぱりそれは嫌だな……」
「じゃあ言うよ。早く降りて来て」
「あ、うん……」
本当にそんな作戦で大丈夫なんだろうか……。香月は心配、興奮、そして期待しながら足早に出口から出た。
予告通り西野は出口にシーマを横付けしていた。
「あれだろ?」
乗り込むなり、西野が指差したのは、そこから5メートル離れた駐車場にある1台のボクシーであった。
「えっ!? あそこにあったっけ!?」
「移動したよ、さっき」
さっきより出口の近くに移動している。
「どうしよう……」
「とりあえず確認してみるから。もし間違ってたらそのまま帰ってくる」
西野は車を少し前に移動させて邪魔にならない位置に停車させると、降り、ボクシーに堂々と近づいていった。
さて、西野は一体どんな作戦でもって相手を納得させるのであろうか。
一番効果が高いのは、いかにそれが恥ずかしいことであり、また迷惑なことであるかを教える方法であるが、それがなかなか難しい。
しかも、相手はなかなかちゃんと話を聞いてくれるような人ではないので少し難しいかもしれない。更に、西野とは初対面だ。また、宮下なら初対面でもそれだけ立場のある人間であるから説得はまだ可能だが、西野……。
やはり、人選を間違えたか……。
西野は開けられた窓を見つめるように話をしている。長引かないようならいいのだが。
ところが、突然ボクシーのドアが開いたかと思うと男が中から出てきた。
金髪である。高藤だ、間違いない。
何を言っているかはよく分からないが、まさかの路上口論。
周囲に人はいないが、まだ店舗の明かりはついており、間違いなく宮下と矢伊豆は中にいる。
報告に行くべきか、車内で潜んでいるべきか迷っているところに、玉越が出てきた。
やはり、輪に入る女だ。
腕を組み、話に参加する玉越に、苛立ちを隠せない高藤、それに反抗するのが後姿で分かる西野。
予想を遥に超えた大事件になってしまい、腕時計を確認したその瞬間だった。
「しつこいのに苦労してるくらいだったら、そんな気遣うなよ」
「……そうかなぁ」
「そうだよ」
「……どうしよ」
香月は考えながら、荷物を持って廊下を歩き始める。
「そうか、やっぱり宮下に相談するか」
「やっぱりそれは嫌だな……」
「じゃあ言うよ。早く降りて来て」
「あ、うん……」
本当にそんな作戦で大丈夫なんだろうか……。香月は心配、興奮、そして期待しながら足早に出口から出た。
予告通り西野は出口にシーマを横付けしていた。
「あれだろ?」
乗り込むなり、西野が指差したのは、そこから5メートル離れた駐車場にある1台のボクシーであった。
「えっ!? あそこにあったっけ!?」
「移動したよ、さっき」
さっきより出口の近くに移動している。
「どうしよう……」
「とりあえず確認してみるから。もし間違ってたらそのまま帰ってくる」
西野は車を少し前に移動させて邪魔にならない位置に停車させると、降り、ボクシーに堂々と近づいていった。
さて、西野は一体どんな作戦でもって相手を納得させるのであろうか。
一番効果が高いのは、いかにそれが恥ずかしいことであり、また迷惑なことであるかを教える方法であるが、それがなかなか難しい。
しかも、相手はなかなかちゃんと話を聞いてくれるような人ではないので少し難しいかもしれない。更に、西野とは初対面だ。また、宮下なら初対面でもそれだけ立場のある人間であるから説得はまだ可能だが、西野……。
やはり、人選を間違えたか……。
西野は開けられた窓を見つめるように話をしている。長引かないようならいいのだが。
ところが、突然ボクシーのドアが開いたかと思うと男が中から出てきた。
金髪である。高藤だ、間違いない。
何を言っているかはよく分からないが、まさかの路上口論。
周囲に人はいないが、まだ店舗の明かりはついており、間違いなく宮下と矢伊豆は中にいる。
報告に行くべきか、車内で潜んでいるべきか迷っているところに、玉越が出てきた。
やはり、輪に入る女だ。
腕を組み、話に参加する玉越に、苛立ちを隠せない高藤、それに反抗するのが後姿で分かる西野。
予想を遥に超えた大事件になってしまい、腕時計を確認したその瞬間だった。