絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
「姉貴が家賃払うっていうから。タダに乗ったらこの始末だ……、人の部屋勝手に漁ってゲームはするし、俺のプライバシーは金で買われたんだよ」
「売ったの自分じゃん(笑)」
 女2人は他人の苦労を、楽しく笑い飛ばす。
「って、自分なんか家持ちじゃん」
 西野は玉越に向かって少し口を尖がらせてみせた。
「掃除が大変で嫌なのよ」
 玉越は身のなりにそぐわぬ、自分の一軒家を持っている。もちろん、実家ではなく、独身の彼女自身で建てた家だ。香月は、彼女がどういう家庭に育ったのか、どうして一軒家に住んでいるのか全く知らないが、彼女と接する上でそんなことはどうでもいいことだった。
「……まあなー。俺んちなんて平均年齢低くて大変よ……。俺が平均値上げてるからなあ」
「え、いくつの人がいるの?」
 香月は目を見開いて聞く。
「すごいから、この家」
 玉越は苦笑した。
「高校生が3人。しかも女ばっか」
「えー、すごい!!」
「話あわねーし、全然つまんねー。オヤジ扱いに、加えて、アッシー呼ばわり」
「いいじゃんねー、花の女子高生生活」
「ぜんっぜん。俺ガキには手つけないタチだから」
「ま、それが普通なんだけどね」
 玉越は、冷静にはねのける。
「香月んちは?」
 一瞬、この2人がレイジファンであったかどうか考えてから
「うちはレイジとそのバックバンドの人だよ。バックバンドの方が友達」
「えっ、レイジ? ってあの?」
 玉越はじっとこちらを見つめた。
「へぇ。すげぇじゃん。それで東京マンションか」
「でも、なんか……怖くて嫌だよ」
「何で?」
 2人は同時に聞いた。
「なんか……威圧感を感じる。バックバンドの人はそうでもないんだけどね」
「バックバンドって何してる人?」
 西野が聞く。
「ギター……」
「しらねーな」
「とゆーか、あんたベースでもドラムでも知らないでしょーが」
「まあ、確かに」
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