絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ
何を話そうか、一瞬の隙をつかれて、意外にも彼女の方から話を始めた。
「東都マンションはどういう感じなんですか?」
「どういう感じ、とは?」
「東京マンションってルームシェアマンションなんです。今私は友達と3人暮らしなんです。けど時々……一人暮らしをしたいって思います。宮下店長を見てると羨ましくて……」
「ああ、確かに一人暮らしは気楽ですね。だけど、住む場所一つでも自分の意思が結局はすべてを左右します。気を引き締めてこの先も生きていかなければ、とよく思いますよ」
「……そうですか……」
「はい」
香月が思うことが少し読めたので、優しく笑う。
「真籐さんは、本当に大人……ですよね」
言うと思った。
「そんなことないですよ、日々苦労もしています。なかなか遊びに行く暇がないから、彼女もできなくて(笑)」
「そうなんですか?」
「それにやっぱり、こんな仕事だと、土日休みじゃないから。なかなかうまくいきませんしね……」
「そうですねぇ……」
香月が何か考えているのがすぐに分かったので、
「今、彼氏はいますか?」
年下ということを考慮してもらおうという作戦でいく。
「……うーん、まだ微妙なラインではありますけど……」
特に笑顔ではない。
「……。
同じ業種だったらうまくいくかもしれませんね」
「そうですね。それは思います。同じ店舗だと特に休みをあわせるのは簡単ですしね」
彼女は酔うというほど酔っていない。
ただ頬は明るくなり、まぶたが少しとろんとしているのが少し分かる。
「僕なんか、ずっと彼女がいません。好きな方がいる香月さんが羨ましいくらいですよ」
ただ、大らかに大人、を努める。
「好きな人もいないんですか?」
素直に聞いてくれたお陰で、次が助かる。
「いや、まあ全くいないわけではないですけれど、脈ありな人がいない、という感じかな」
自分で言ってみたはいいが、惨めになって少し笑う。
「真籐さんが気づいてないだけですよ、きっと」
「え」
まさか「私は好きです」……とは……。
「東都マンションはどういう感じなんですか?」
「どういう感じ、とは?」
「東京マンションってルームシェアマンションなんです。今私は友達と3人暮らしなんです。けど時々……一人暮らしをしたいって思います。宮下店長を見てると羨ましくて……」
「ああ、確かに一人暮らしは気楽ですね。だけど、住む場所一つでも自分の意思が結局はすべてを左右します。気を引き締めてこの先も生きていかなければ、とよく思いますよ」
「……そうですか……」
「はい」
香月が思うことが少し読めたので、優しく笑う。
「真籐さんは、本当に大人……ですよね」
言うと思った。
「そんなことないですよ、日々苦労もしています。なかなか遊びに行く暇がないから、彼女もできなくて(笑)」
「そうなんですか?」
「それにやっぱり、こんな仕事だと、土日休みじゃないから。なかなかうまくいきませんしね……」
「そうですねぇ……」
香月が何か考えているのがすぐに分かったので、
「今、彼氏はいますか?」
年下ということを考慮してもらおうという作戦でいく。
「……うーん、まだ微妙なラインではありますけど……」
特に笑顔ではない。
「……。
同じ業種だったらうまくいくかもしれませんね」
「そうですね。それは思います。同じ店舗だと特に休みをあわせるのは簡単ですしね」
彼女は酔うというほど酔っていない。
ただ頬は明るくなり、まぶたが少しとろんとしているのが少し分かる。
「僕なんか、ずっと彼女がいません。好きな方がいる香月さんが羨ましいくらいですよ」
ただ、大らかに大人、を努める。
「好きな人もいないんですか?」
素直に聞いてくれたお陰で、次が助かる。
「いや、まあ全くいないわけではないですけれど、脈ありな人がいない、という感じかな」
自分で言ってみたはいいが、惨めになって少し笑う。
「真籐さんが気づいてないだけですよ、きっと」
「え」
まさか「私は好きです」……とは……。