絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
「目覚まし」
 めざまし?
「止めて」
 なにを?
「煩い」
 へ……?
「……目開いてるじゃん」
「……」
 隣にはレイジ。
「……あれ……」
「目覚まし!」
「……」
 ここ、家? ツアーは?
「ツアーは?」
「目覚まし!!」
 レイジは布団を被って叫ぶ。
 仕方なく香月はデスクの上においてある目覚ましを止めた。
「なんで私の部屋で一緒に寝てるの……」
「……」
 聞こえなかったのか、一言もない。
 嘘……夢?
 今日何日? デスクのパソコンにプリントアウトして貼っているシフトを見る。今日は仕事が休み。……じゃあなんで目覚ましが?
 慌てて手帳のスケジュールを確認するが、予定は入っていない。
 ……なかったことにしよう。何も。
 そしてもう少し寝たい。けど、その前に確認しなきゃ。
 そのまま部屋を一度出た。
「……おはよ」
 既にユーリは起きてリビングで珈琲を飲んでいる。
「おはよう」
「あのさ、昨日私、ユーリさんの部屋に行った?」
「昨日? 来てへんで」
「昨日、何があったっけ?」
「記憶ないんや(笑)。昨日はユキがここまで送りに来たよ」
「……。あぁ! 一緒に飲んで!」
「2人で飲んでたんだってね。もうレイも飲みすぎて大変だったよ。俺一人シラフやもん」
「……私、ユキトさんとキスしたって言ってました?」
< 58 / 314 >

この作品をシェア

pagetop