絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ
大処分セールで店長、副店長に褒められることは確実だが、在庫のほとんどが第二倉庫にある。プラットホーム付の第一倉庫は店内に併設されているが、過剰在庫などを詰め込んである第二倉庫に行くには一旦外に出ないといけない。これがまた雨の日だと大変なのだ。
とりあえず先に店内にある物を全て集める。季節物の扇風機や掃除機、電池パックはあった。後は第二倉庫である。
第二倉庫に行くには、大まかな用事を済ませてからでないと行けないと考えているうちに昼食の順番になり、それを終わらせると、持っていた伝票にようやく取り掛かれたのは、午後5時を過ぎたところだった。
香月は意を決して、まず第一倉庫に降りた。第二倉庫に行くには、そこが一番近い。
そして外へ抜ける通用ドアを開けた。
……。とても、傘をさせる雰囲気ではない。
「香月さん、外行くの?」
「何往復も」
倉庫の依田が声をかけてくれる。確かまだ20歳くらいだ。倉庫に行く度、どこからともなく現れて声をかけてくる。確かに、こんなダンボールだらけで数人しか人がいない所でいたら、飽きてくるのだろう。
「あちゃー……あ、カッパも今出払っててないな。向こうの鍵も今閉めたとこだよ。矢伊豆副店長が」
「じゃぁまず鍵かぁ」
「いいよ、鍵が開いたらとってきてあげるから」
「え」
ラッキ……
「おーい!! 依田ぁ!! ちょっとそこまで行ってきてくれ!!」
この2人の会話は到底聞こえていないはずだが。間髪詰めず倉庫長に呼ばれ、依田は「ごめん」とあっけなく苦笑いしながら去った。
ラッキー……言いそびれた。
気を取り直して、一人トランシーバーのマイクに話しかける。
「すみません。店長か副店長か、どちらか第二倉庫の鍵を開けてください」
返答はすぐに返って来る。
『今行きます』
矢伊豆の方だ。彼とはほとんど面識がない。近くを歩いているのを見たことがあるくらい。下の名前も知らない。しかし、彼が年のわりに格好いいと若者の間でもてはやされているのは知っている。主婦層の間でも、抱かれたい社員ナンバーワンであることは有名だ。
文句の多い玉越が、「まあ、いい方」と珍しく納得した男でもある。
一言でいえば、セクシーなオヤジだ。確か年は40を過ぎていると思う。
「あれ、香月が行くの?」
矢伊豆はこちらに近寄りながら尋ねた。
とりあえず先に店内にある物を全て集める。季節物の扇風機や掃除機、電池パックはあった。後は第二倉庫である。
第二倉庫に行くには、大まかな用事を済ませてからでないと行けないと考えているうちに昼食の順番になり、それを終わらせると、持っていた伝票にようやく取り掛かれたのは、午後5時を過ぎたところだった。
香月は意を決して、まず第一倉庫に降りた。第二倉庫に行くには、そこが一番近い。
そして外へ抜ける通用ドアを開けた。
……。とても、傘をさせる雰囲気ではない。
「香月さん、外行くの?」
「何往復も」
倉庫の依田が声をかけてくれる。確かまだ20歳くらいだ。倉庫に行く度、どこからともなく現れて声をかけてくる。確かに、こんなダンボールだらけで数人しか人がいない所でいたら、飽きてくるのだろう。
「あちゃー……あ、カッパも今出払っててないな。向こうの鍵も今閉めたとこだよ。矢伊豆副店長が」
「じゃぁまず鍵かぁ」
「いいよ、鍵が開いたらとってきてあげるから」
「え」
ラッキ……
「おーい!! 依田ぁ!! ちょっとそこまで行ってきてくれ!!」
この2人の会話は到底聞こえていないはずだが。間髪詰めず倉庫長に呼ばれ、依田は「ごめん」とあっけなく苦笑いしながら去った。
ラッキー……言いそびれた。
気を取り直して、一人トランシーバーのマイクに話しかける。
「すみません。店長か副店長か、どちらか第二倉庫の鍵を開けてください」
返答はすぐに返って来る。
『今行きます』
矢伊豆の方だ。彼とはほとんど面識がない。近くを歩いているのを見たことがあるくらい。下の名前も知らない。しかし、彼が年のわりに格好いいと若者の間でもてはやされているのは知っている。主婦層の間でも、抱かれたい社員ナンバーワンであることは有名だ。
文句の多い玉越が、「まあ、いい方」と珍しく納得した男でもある。
一言でいえば、セクシーなオヤジだ。確か年は40を過ぎていると思う。
「あれ、香月が行くの?」
矢伊豆はこちらに近寄りながら尋ねた。