全部、私からだった。 ~AfterStory~


 その刺すようなそれに痛みすら感じて、恐怖で身体が震え出した。
 それがどうにも止められない。


 赤根くんは狂っている。


 こんなのは愛情なんかじゃない、歪んだ独占欲だ。

 怖い、殺されるかもしれない、逃げなくちゃ。



 赤根くんが怯んだ隙に身を起こし、素早く立ち上がった。

 対面しているソファーに置いてあった鞄を取ろうと一歩踏み出したら、赤根くんがひざまずいたまま、私の下半身に抱きついた。


 足元から私を見上げる赤根くんの表情は、先程の怖いほどの冷たさは消えて、切なげで苦しげで、今にも泣き出しそうだった。


「先生、行かないで。
 僕が間違ってた、ごめんなさい。
 先生のレッスン受けるよ。
 先生のためなら大嫌いなピアノだって弾く。
 先生と生徒って関係で構わない。
 だからお願いだ、行かないで」


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