全部、私からだった。 ~AfterStory~


「多恵……」

 哀しげにりっくんが私の名を呼ぶけれど、それでも私の八つ当たりは自分では抑えられなかった。


「辞めるって言ったら辞めるんだからね。
 止めないでよ?
 止めたって無駄なんだから」

 止められてもいないのに、一方的に捲し立てれば、

「多恵はこの仕事が生き甲斐っつってなかった?」

 こんな時、お約束のようなセリフが帰って来た。

 刑事のくせに、もっとましな説得は出来ないのか、と。
 私の中のモヤモヤした気持ちが益々膨らんで、既に爆発寸前だ。

 いや、もう爆発しているのかな、良くわからない。


「ピアノの先生は続けるもん。
 あんな教室でわざわざ教えなくっても、勝手にここで教えるもん。
 もう行きたくないもん、行かないもん」

 自分でしゃべくり倒しておきながら、『もんもんもんもん』うるさいなぁと思った。


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