全部、私からだった。 ~AfterStory~


「わかった、わかったよ、赤根くん。
 ありがとう、私なんかを愛してくれてありがとう。
 だから……」

 追い詰められ完全に逃げ場を失って、今、私は窮地の中の窮地にいる。
 そういう時って涙も出ないんだなぁなんて、呑気にそんな事を考えながら、ゆっくりと言葉を紡ぎだした。


「『なんか』なんて言わないで?
 先生は、本当に素晴らしい女性だよ。
 でなきゃ僕がこんなにも惹かれるはずがない」

 言って赤根くんは再び歩み始めて距離を詰め、私の目の前に立った。


「そうだね、そうだよね。
 うん、わかった。
 だから、ハインリーケさんの薬を返してあげて?

 私と赤根くんは今、心でしっかり繋がってる。
 心の繋がりを引き離すなんて、誰にも出来ないよ。
 そうでしょ?」


 赤根くんを見上げ、切に願った。


 何だかもう、全てがどうでも良くなってしまって。
 思ってもいない言葉が、私の口からツラツラと滑り出て来る。


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