全部、私からだった。 ~AfterStory~


「姉ちゃん、いくら何でもそりゃあんまりだ。
 坊ちゃんが可哀想だと思わねぇか?」

 私を羽交い絞めにした男が、背後から耳元で囁く。
 その下品な低いしわがれ声には、聞き覚えがあった。


 そうだ、忘れてた。
 『運転手』の存在を――



「離してっ! 私に触らないでっ!
 離してってば、気持ち悪い」

 大声で喚き散らしながら、散々暴れてやったけど、いくら小柄とは言え相手は大人の男だ。
 私の力なんかが到底敵うはずもなく。



 呆気なくリビングに連れ戻された私を、赤根くんは酷く不満げな表情で見据えた。


< 176 / 233 >

この作品をシェア

pagetop