全部、私からだった。 ~AfterStory~


「笑かすなよ、姉ちゃん、ガッツリ逃げようとしてただろ?
 全力疾走だったよな?」

 男が嘲笑を浮かべて言う。

 何もしなくても充分憎らしい容姿だと言うのに。
 益々腹が立って、殺してやりたいとさえ思った。



「この男、信用できるの?
 ハインリーケさんに雇われてんでしょ?」

 無駄だとわかっていたけれど、縋る思いで赤根くんを見詰めて言ってみた。


「そうだけど?
 あの女と、途中までは目的が一緒だったからね。
 利用させて貰ったんだ。
 そして、最終的には僕が彼の雇い主となった」

 目を細め、薄く微笑んで赤根くんは涼しげに答える。


< 178 / 233 >

この作品をシェア

pagetop