全部、私からだった。 ~AfterStory~


 身じろぎもせず呼吸まで潜めて、じっと天井を睨み付けていた。

 居留守を使うことにした。
 酷くなんかないもん、自己防衛だ。

 苦渋の選択なのです、どうかわかって。
 そして、今日のところは諦めて。



 数回インターホンは鳴らされ、そして再び静けさが戻る。


 不気味なぐらいの静寂。


 嫌な予感がする、だって彼が帰る気配がない。
 足音も衣擦れも何も聞こえてこない。


 カチャリと玄関の鉄扉が開く音が聞こえ、しまった、と思った。
 施錠するのをすっかり忘れていた。

 ふかふかベッドが余りにも恋しくて、気ばっかりはやって。
 防犯対策なんかどこかへ吹っ飛んでしまっていた。


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