全部、私からだった。 ~AfterStory~
りっくん座椅子は素晴らしく快適だ。
心地良くて癒される。
疲労回復効果抜群の優れもの。
けれど、今の私にはそれでも拭いきれない不安があった。
赤根くんへの疑心。
ストーカーではないと思うけれど、私を駅からつけて来た、何者かの不気味な足音。
相変わらずテレビの内容なんか全く頭に入って来なくて、不快で気持ち悪いモヤモヤした感情が、じわじわと全身に広がって吐きそうだ。
ついに耐え切れなくなった。
唐突に振り返って、りっくんの首に両腕を巻き付けて思い切り抱き付いた。
「多恵、苦しっ」
呻くように言うりっくんなどお構いなしで、更に両腕に力を込めてその首筋に顔を埋めた。