全部、私からだった。 ~AfterStory~


「うん、いってらっしゃい」

 なんだか私まで照れ臭くなって、ふふっと笑って誤魔化してみたり。


「せっかくだから、定番のあれ、やっとくか」

 何のことやらさっぱり見当もつかず、ポカンと眺めていたら、りっくんは背の低い下駄箱に片手を添え、ほんの少し身を屈めた。


 チュッ――
 小さな音を鳴らして、りっくんの唇が私のそれに一瞬だけ触れた。

 『定番』とは、『いってきますのチュー』のことだったらしい。


 出会って間もない頃から既に、昔気質の男だなぁと、事あるごとに感じてはいたけれど。

 やっぱり、
 りっくんは、思考も古臭い。

 でもだからこそ、凄く男らしくて頼り甲斐がある。
 誰が何と言おうと、そんなりっくんが私は大好きだ。


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