全部、私からだった。 ~AfterStory~
翌日、駅でキーケースの落し物が届けられていないか尋ねた。
自宅と職場、両方の最寄駅で。
けれど、どちらもヒットならず。
ガックリと肩を落として職場へ向かう。
職員用ロッカーも鍵が無くて開けられないから、出勤するなり講師室へと直行した。
既に主任は仕事中。
自分のデスク上のノートパソコンに向かって、カタカタと忙しくキーボードを叩いていた。
「おはようございます」
遠慮がちに声を掛ければ、ピタリと手を止め、ギラリと光る銀縁メガネを外して私を見上げた。
鍵を失くした事を簡単に説明し、ロッカーキーのスペアを貸して欲しいと告げると、主任は露骨に顔を顰めながら、デスクの引き出しを開けた。